- 【大基本】ミノキシジルは発毛剤でプロペシアは脱毛予防剤
- ミノキシジルは内服しないとほぼ無意味
- 5%以上の濃度の外用薬もあるが大きな効果は見込めない
- 塗るなら2回、飲むなら1回。タイミングはいつでもOK
- 半年経過して効果が何も出ないなら使用は中止すべき
- M字(生え際)には効果期待薄だが「生えた」というケースも
今回は大正製薬リアップの主成分として有名になった、「ミノキシジル」の発毛効果について解説させてください。
ミノキシジルは外用薬としては厚労省の認可がおりていて、国内では正式に「医薬品」として薬局で販売されています。ところが内服薬としては認可がおりていないこともあり、信頼できる臨床データが存在していません。
それゆえ、ネットなどで検索しても根拠のある記事は見つかりませんし、
- 生えました!
- 効果が全くありませんでした
と結論も両極端に分かれていると思います。
そこで当記事では、業界内のつながりなどを駆使して「ミノキシジルの本当の効果」について裏をとり、当院院長の藤田先生に丁寧に解説してもらいます。
最後には、ミノキシジルの処方において患者のことを最優先で考えている「患者ファースト」なAGAクリニックについて紹介しています。
この記事の執筆者
藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長
東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。
【大基本】ミノキシジルは発毛剤でプロペシアは脱毛予防剤
まず基本的なことをお聞きします。ミノキシジルは発毛剤ということでいいのでしょうか?
そうですね、発毛剤という認識でOKだと思います。
解説いたします
「OKだと思います」と中途半端な言葉をあえて使ったのには理由があるのです。
AGA(男性型脱毛症)になって髪の毛が抜けると、抜けっぱなしではなく抜けた後に産毛(うぶげ)が必ず生えてきます。生えてこない人はいません。絶対生えてきます。
問題はこの後です。健常であればその産毛が成長していき徐々に太く濃くなっていくのですが、AGAになると髪の毛が細い産毛の状態のままで成長が止まってしまうのです。
この成長が止まってしまった髪の毛を太く濃くする薬がミノキシジル。
何もないところから髪の毛が生えてくるわけではないので、正確な日本語を使うなら「発毛」ではなく「育毛(毛を育てる)」です。
しかし「発毛」のほうが薬の効果効能としてイメージしやすい単語なので、当記事内ではミノキシジルの効果効能は「発毛作用」として説明を続けていきます。
写真は大正製薬リアップX5です。赤枠で囲ってあり、はっきりと「発毛剤」と記載されています。
脱毛予防はプロペシア(あるいはザガーロ)
念のため解説しておきます。
薄毛対策は「発毛」と「脱毛予防」の2つが必要です。ミノキシジルはすでに説明したように発毛を誘発する成分で、脱毛予防にはプロペシア(あるいはザガーロ)の服用が必要になります。
どんなに発毛させても、脱毛予防をしないことには薄毛は解消しないので、ミノキシジルとともに脱毛予防薬であるプロペシアやザガーロについても勉強しましょう。
なお市町村にある皮膚科クリニックでは、未認可薬であるミノキシジルは処方しないところがほとんで、処方してくれるのは脱毛予防薬であるプロペシアかザガーロになります。ただしこの薬でAGA(男性型脱毛症)の進行予防はできても、フサフサになることはありません。
ミノキシジルは内服しないとほぼ無意味
育毛剤(外用薬)としてミノキシジルを使った場合でも内服薬の時と同じような発毛効果はあるのでしょうか?
正直厳しいと思います。多少髪の毛が太くなることはあっても、「フサフサ」になることはありません。
解説いたします
- リアップ(大正製薬)
- スカルプDメディカルミノキ5(アンファー)
- リグロEX5(ロート製薬)
などが有名な商品ですが、現在20種類くらいのミノキシジル含有の育毛剤が販売されています。しかし、これらの商品でどんなにがんばっても薄毛の悩みが解消することはまずないと思います。
ミノキシジルは動脈に作用する薬です
ミノキシジルを飲む薬として口から服用すると動脈に作用し、そのことにより動脈が活性化され、血液の流れが良くなり頭皮を含めた全身に栄養が渡りやすくなります。その結果として髪の毛が太くなるのです。
※他の体毛(手足の毛など)も太くなります
ところが、育毛剤としてミノキシジルを頭皮から浸透させると、頭皮周辺の毛細血管は活性化されますが、心臓付近の大動脈まではミノキシジルの作用が及ばないので栄養が十分に髪の毛までは届かず発毛効果は限定的です。
AGA専門クリニックの公式サイトを見ていると、処方するのはプロペシアとミノキシジル外用薬の2種類と記載されているケースがほとんどでも、実際にはミノキシジルのタブレット剤(内服薬)を処方しています。
【ミノキシジルタブレット】
なぜなら、ミノキシジルは飲み薬として服用しないと効果がほとんど出ないことをAGA専門クリニック側は分かっているからです。
ただし日本国内はもとより、世界のどの国でもミノキシジルタブレットは認可されていません。循環器系(心臓・肺・血管)にかなりの確率で動悸や息切れなどの副作用が出るからです。
ミノキシジルは元々はロニテンという名前で、高血圧患者に対する血管拡張剤のための処方薬でした。ロニテンを処方された高血圧患者に多毛症の副作用が現れ、「薄毛治療に使えるのでは?」と開発がスタートしたのは今から30年ほど前です。
しかしどんなに研究を続けても、ミノキシジルが動脈にのみ作用してしまうため心臓の動作に不均衡が起こり、心臓を含めた各循環器に副作用が出ることが分かっています。おそらく今後もミノキシジルタブレットが医薬品として認可される日はやってこないでしょう。
5%以上の濃度の外用薬もあるが大きな効果は見込めない
ミノキシジルの外用薬(育毛剤)に話を戻します。
リアップやメディカルミノキ5、リグロEX5は、厚労省の規制のためどの商品もミノキシジルの濃度は5%以下です。
これ以上の濃度になると副作用として「かぶれ」が出てしまうのと、ごくごく稀に、飲んだときと同じように循環器系にも副作用が出てしまう可能性が否定できないので、国(厚生労働省)が「ミノキシジルの含有量は5%まで」と規制しているのです。
それでもAGA専門クリニックなどに行くと、10%や15%といった濃度の高いミノキシジル育毛剤を処方してくれるところもあります。
副作用を無視すれば濃度は濃ければ濃いほど発毛期待値があがるので、患者側の要請にこたえる形で各AGAクリニックはインフォームドコンセント(デメリットを含めた丁寧な説明)をした上で、濃いミノキシジル育毛剤を処方しているのです。
ただしいくら濃度を濃くしたところで、頭皮からミノキシジルを浸透させて動脈に作用させるには限界があり、5%のみミノキシジルを頭皮に塗ろうが15%のものを塗ろうが、結果に大きな差は出ません。
ではどうすれば発毛するのかというと、結局のところミノキシジルは飲み薬として服用しないことには「フサフサ」という結果を手繰り寄せることはできないのが現実です。
塗るなら2回、飲むなら1回。タイミングはいつでもOK
藤田先生、ミノキシジルの効果を最大限に引き出すためには何時に塗る、あるいは飲んだらいいのでしょうか?
使用する時間帯によって効果に差が出るという臨床データは示されていないので、いつでもかまいません。ただし、育毛剤として塗るなら、できれば1日2回が好ましいです。
解説いたします
「ミノキシジル 飲むタイミング」などのキーワードでサラっとgoogleで検索してみると、飲む(あるいは塗る)タイミングには諸説色々あります。
- 髪の毛が成長するのは就寝中だから寝る前がベスト
- 空腹時のほうが吸収が早いから空腹時に飲みましょう
- 元々は血管拡張剤なので血圧が高い朝の服用がベター
これだとあなたは困ってしまうので医学的に回答すると、「タイミングはいつでもいい」が結論になります。なぜなら、根拠となる臨床データが存在していないからです。
臨床試験はしているものの、統計的に有意な差が出ない以上は、どのタイミングで飲んでも、どの時間帯に塗っても効果に差が出ないということで、「タイミングはいつでもいい」が誠実な回答になります。
ただし、育毛剤として使用する場合は、塗る「頻度(ひんど)」について1日1回よりは2回塗るほうが発毛効果は大きいです。
半年経過して効果が何も出ないなら使用は中止すべき
藤田先生、ミノキシジルの使用をやめるタイミングというのはあるのでしょうか?
あります。育毛剤として塗る場合でも内服薬として服用する場合でも、半年経過して顕著な変化がないなら使用は中止してください。体に悪い上にお金ももったいないです。
解説いたします
まず、ミノキシジルタブレット(内服薬)のお話をさせてください。
通常飲み始めてから1か月程度で、初期脱毛と呼ばれる症状が始まります。朝起きて枕元に髪の毛が20-30本ついていたり、あるいは洗髪時に髪の毛が100本前後抜けたりという症状です。
元々薄くて悩んでいる時に、さらに脱毛するわけですから大変な恐怖だと思いますが、これはミノキシジルが正常に作用している(効いている)証拠なので「吉報」だと思ってください。
初期脱毛は3週間前後続きやがて脱毛は止まり、服用から3ヶ月程度経過後に、少しづつ全身の毛が濃くなっていきます。指毛や腕毛が先に濃くなる人が多く、毎日指や腕の毛を観察する患者さんも多いです。
本格的にフサフサになるのは服用から4か月から半年前後で、ミノキシジルのレスポンダー(薬の効果が出る人のこと)の人だとびっくりするくらいフサフサになる人もいます。
2人に1人は効果が出ないのがミノキシジルの現実
「レスポンダー」という医療用語を先ほど使いました。レスポンダーとは、飲んだ薬が意図どおりに作用する(効く)人のことです。
例えば、バファリンを飲んで頭痛が治まる人は、バファリンのレスポンダーであり、反対に、バファリンを飲んでも頭痛が治まらない人を(バファリンの)ノンレスポンダーと呼びます。
ミノキシジルのレスポンダーの割合がどの程度いるのか正確な臨床データは存在していませんが、恐らく20-25%程度だと思います。
意外に低い数値だと感じませんか?リスクを冒して(ミノキシジルは循環器系に副作用が出ます)服用したのに、フサフサになる確率がたった25%程度とは。
それでもノーベル賞受賞で話題になったガンの新薬オプジーボも、顕著にガンの腫瘍縮小が認められたのは2-3割であることを考えると、ミノキシジルのレスポンダーが2割強であるという数字は、医学的には決して低くないことが分かります。
半年服用して変化がなければ心電図をとって服用継続か否か判断
ミノキシジルを服用した場合、初期脱毛が服用後1か月前後で訪れ、その後3か月から4か月目には発毛が始まり、レスポンダーの人であれば半年程度でかなりの発毛効果が見込めると思います。
服用後半年が経過しているのに顕著な改善どころか初期脱毛も起きないなら、副作用リスクだけが残ってしまうことになるのでただちに服用は中止してください。
ミノキシジルは未認可薬
ミノキシジルという薬は、そもそもが未認可薬なので、いくら毛髪に改善効果があるとはいえ医学的な立場からすれば積極的に服用を薦められる薬ではありません。
動悸や息切れ、ひどい場合だと不整脈が出る方もいます。
※逆に副作用がほとんど出ない方もいます
顕著な改善効果が認められないなら、ただちに服用を中止するのが基本です。ただしどうしても諦めきれない場合は、循環器内科に診断に行き心臓にどの程度負担が生じているかを心電図で確認した後に、服用を継続するかどうか判断してください。
ミノキシジルは動脈に作用しますが静脈に作用が及ばないため、血管の動作に不均衡が起き心臓に負担がかかります。
心臓に負担がかかると、必然的に心臓に普段以上に酸素供給が必要になり肺にも負担がかかり、胸の動悸や痛みだけでなく呼吸不全の症状が出ることも。心電図検査は必須だと認識しておいてください。
ミノキシジル外用薬(育毛剤)の場合の使用継続判断基準
ミノキシジルをリアップやメディカルミノキ5などで「育毛剤として」使用する場合も目安は「半年」です。
服用した場合より、明らかに効果効能は落ちるとはいえ、発毛原理は同じなので軽い初期脱毛の後3か月から4か月で発毛効果があるはずです。
ただしこれも、レスポンダー(ミノキシジル外用薬に効果が認められる人)に限った話なので、使用後半年が経過して、鏡の前の自分に明らかな変化がない場合は服用を中止してください。
服用する場合と違って、外用薬としてのミノキシジルの副作用は頭皮のかぶれ程度なので、大きな害はないのですが、単純にお金がもったいないです。
リアップやメディカルミノキ5は月額7-8千円くらいかかり、発毛剤として認可を受けられないその他の一般の育毛剤の中にも「当たり」は必ずあるので、リアップやメディカルミノキ5の使用は停止し、別の育毛剤を試してみるほうが賢明だと思います。
M字(生え際)には効果期待薄だが「生えた」というケースも
一般的に、ミノキシジルはM字(ひたいの生え際)には効果があるのでしょうか?
残念ながら、M字は期待薄です。特に育毛剤としてミノキシジルを使用した場合、顕著に改善するのは頭頂部だけです。
解説いたします
ミノキシジルは、主に頭頂部に改善効果が見込める薬で、前頭部(M字部分)に効果はあまりないというのが定説です。私の経験からもM字に顕著な効果が出た事例は見たことがありません。
ただし、当院の毛髪診断士さんの意見は多少違うようなので聞いてみましょう。
ミノキシジルを10年以上服用しているそうですが、M字部分に効果がありましたか?
飲み始めた頃はM字もかなり改善しましたね。もうそれはビックリするくらいに。ただし3年目に突入した頃からはほぼ効き目はなくなりました。ちなみに育毛剤タイプのミノキシジルはM字には効かないと思います。
解説いたします
ミノキシジルは、AGAクリニックで処方されるものや、個人輸入代行で手に入れたものを含めて15年近く服用していますが、最初はM字部分にも本当によく効きました。
一瞬ですが、前髪を人前でかきあげることができたくらい改善したので、「効いた」と言ってよいと思います。
ただし、その頃はまだ知識も情報もなかったので、今では恐ろしいことですが10mgのミノキシジルタブレットを服用していました。ほとんど命と引き換えです。
ミノキシジルの適正濃度は最大でも2.5%ですが、その4倍にあたる10mgを毎日服用していたので、それでM字にも効いたのだと思います。
※今は藤田先生の指導に従ってミノキシジルの濃度は2.5mgにしています
余談ですが、M字部分をなんとかしたければ自毛植毛しかないと思います。
私もありとあらゆることを試してきましたが、頭頂部はなんとかなっても、M字は本当に効果が出にくいです。
私も循環器系への副作用で苦しみました
AGAクリニックにいくと平気で10mgのミノキシジルを処方してきますが、はっきりいって自殺行為なので絶対にやめてください。私も以前に10mgを飲んでいたころは心臓は痛いし息切れはするし、副作用だらけでした。
AGAクリニックの先生達は、門外漢(眼科医だったり麻酔科医だったり)の先生ばかりでまともな知識を持った先生に出会ったことがありません。勧められても10mgのミノキシジルは絶対に服用しちゃダメです。
大袈裟ではなく本当に命にかかわる可能性を否定できないので10mgのミノキシジル服用は控えてください。通常1.25mgでも発毛するし、MAXでも2.5mgまで。
それ以上の濃度は「命と引き換えに発毛させる」に等しいです。
残念ながらM字への発毛効果は限定的
話を「M字にミノキシジルは効果はあるのか?」に戻しますが、これだけ副作用デメリットがあるにもかかわらず、ミノキシジルのM字への効果は定説どおり「効果は限定的」です。
私は薄毛治療仲間のネットワークにも入っています。ミノキシジルでM字が顕著に改善した経験を持っているのは私含めてほんの一部。
その(私を含めた)M字が回復した人に共通しているのは、ある種致死量とも言える10mgのミノキシジルを服用し、例外なく動悸や胸の痛みなどの副作用で苦しんだ経験を持つ人達です。
体験したからこそ言えますが、健康と引き換えに薄毛を治療するのは本末転倒。ミノキシジルでM字を改善するのは現実的とは言えないので、別の手段(自毛植毛など)を考えたほうが良いと思います。
まとめ
当院の毛髪診断士さんの体験談が参考になったのではないでしょうか。
15年もの間ミノキシジルを飲み続けている人というのは稀で、M字への改善効果が限定的であることなどは、医師よりも実際に服用した患者からの情報の方が説得力がありますよね。
最後簡単に当記事を箇条書きでまとめておきます。
- ミノキシジルはタブレット剤として服用しないと発毛効果は限定的
- タブレットとして飲む場合の限界濃度は2.5mgまで
- 服用したとしてもM字への効果は限定的なので自毛植毛も検討してみる
余談ですが、AGA専門クリニックは「ほぼ営利企業」です。結果を出さないことには患者さんが来なくなるので、初診から5mgや10mgのミノキシジルタブレットを処方することがザラにありますので本当に注意して下さい。
医師に勧められたら「大丈夫かな?」と思って飲んでしまいますよね。ミノキシジルタブレットは2.5mgまで。これだけは絶対に覚えておいてください。
以上