最後にババを引く植毛クリニックはどこ?植毛業界の仁義なき戦い

ババ抜き

生まれた時から身近にスマホがあり、もの心ついたころにはすでにyoutubeなどを見ている「ネイティブデジタリアン」を除き、「ババ抜き」がどういうトランプゲームなのかは恐らくどなたもご存じかと思います。

しかし、国内の各植毛クリニックが我々薄毛で悩む患者を「ジョーカー」と呼び、「リアル版ババ抜き」という名のゲームをやっていることは全くと言っていいほど知られていません。

この記事では、私が5年間に渡って植毛業界を調べあげて闇に迫り、ついに入手した「人間版ババ抜き」について紹介していきたいと思っております。

この記事の執筆者

内科総合クリニック人形町 院長 藤田 英理(総合内科専門医)

藤田 英理 内科総合クリニック人形町 院長

東京大学医学部保健学科、横浜市立大学医学部を卒業。虎の門病院、稲城市立病院、JCHO東京高輪病院への勤務を経て内科総合クリニック人形町を開院。総合内科専門医。AGA治療や生活習慣病指導も行う。

所属:日本内科学会日本動脈硬化学会日本頭痛学会

医師略歴・プロフィールはこちら

目次

自毛植毛クリニック最大のクレーム「後頭部の惨劇」について

美容業界の中の一種である植毛業界は、美容整形ほどでないものの、手術後の患者からのクレームが非常に多い業界の一つと言えます。

  • 期待したほど髪の毛が増えなかった
  • せっかく植毛をしたのに密度がイマイチで納得できない
  • 左右非対称で生えてきてみっともない
  • 植えた髪の毛の方向がバラバラでセットがうまくできない
  • 生えぎ際の最前列に太い毛ばかり植えられて仕上がりが不自然
  • 強引に契約を迫られ大きなローンを組まされた

などなど、様々なクレームが植毛後に植毛クリニックに入りますが、中でももっとも多いクレームが髪の毛を採取した「後頭部の傷跡」であることはあまり知られていません

知られていないのは当然で、なぜなら、「傷跡が残らない」を謳い文句にし、メスを使わず髪の毛を1株(グラフト)づつ後頭部からくり抜くFUE法を採用している植毛クリニックの最大のアキレス腱なので、FUE業界を挙げて事実を隠しているです。

【もはや惨劇】メスを使わないFUE法の手術後の後頭部の写真

論より証拠です。こちらの画像をご覧ください。

FUE植毛の傷跡
FUE植毛の傷跡
FUE植毛の傷跡
FUE植毛の傷跡

惨劇ですよね。これが倫理なき植毛医がメスを使わないFUE法にて植毛手術を行った後の患者の後頭部です。

欧米では多くの被害報告があり、数多くの訴訟が起こされています。FUEは、直径0.83~1.20mmのニードルやパンチグラフトなどと呼ばれる医療器具を使って、後頭部からドナーを採取していきます。

メスを使って後頭部から頭皮ごとはぎ取るFUT法(ドナーストリップ法)と違って、FUE法はドナー(2~3本の髪の毛の束のことで、植毛では”グラフト”とか”株”と呼んでいます)の周囲を必要最小限の範囲くり抜いていきます。

FUE法による自毛植毛
画像引用元:Buckhead Hair Restoration

ですので、たとえば1,000グラフト植毛するなら、最低1,000箇所の丸く白いキズ跡が残ります。

生涯1,000や2,000グラフトくらいの植毛ですむのならFUEでの植毛で全く問題ではないのですが、これが4,000とか5,000グラフトになると添付の写真のような惨劇になるわけです。

外科医の医師なら100%知っているし分かっていると思いますが、体に「穴」を開けてしまうとその穴は隠せないキズとして残ります。皮膚を丸くくり抜く、つまり皮膚を丸く欠損させるわけですからキズが残るのは当たり前です。

しかもやっかいなのは、FUEによって出来た白く丸い後は、分散してるがゆえにリカバリーが一切できないんです。

FUTはキズ跡は残るがキズの総面積をFUEの1/3程度で済む

植毛にはもう一つ、メスを使って後頭部から頭皮ごとはぎ取るドナーストリップ法(通称FUT法)という植毛法があります。

日本国内では「線状に傷跡が残る」だの「手術が痛いし手術後も痛みが残る」だのとFUTを潰したい大手植毛クリニックからネガティブキャンペーンを張られて攻撃を喰らっているFUT法ですが、実は大きな大きな利点があります。

それは「キズ跡の総面積がFUEの1/3程度で済む」というものです。理由を説明します。

FUTは後頭部を、高さ1cm × 横幅22cm(※)前後で皮膚ごとメスで一度はぎ取り、はぎ取った頭皮はバックヤードで看護師が株分け(1グラフト単位に分けていく作業のこと)をしていき、株分けしたものをハゲている箇所に移植(植毛)していきます。
※実際には三日月状に頭皮を剥ぎ取ります

FUT法による自毛植毛
画像引用元:Fut – Follicular Unit Transplantatin surgery for hair loss treatment

患者の後頭部の毛髪密度にもよりますが、だいたい1,300グラフト前後取れます。
※私がFUTで植毛を受けた時は1,370グラフト採取

で、この後なんですが、はぎ取った後頭部の1cm×22cmのキズ後を縫い合わせていくわけです。縫い合わせていくということは、キズ跡が小さくなるってことです。これがFUTの大きな利点です。

植毛医の技術によって差は出ますが、キズ跡は面積にして約1/10程度に縮小されます。

一方、FUEはくり抜いた後の丸いキズ跡は直径が1mm程度なので縫合することは困難なので、そのまんまの面積で残ってしまいます。

細かい計算式はこちらの記事を見ていただければ分かりますが、答えだけ言ってしまうと、キズ跡の総面積はFUTのほうがFUEの1/3程度で済んでしまいます。

最も質の良いドナー(植毛ゴールデンゾーン)は後頭中央部

植毛は後頭部から毛髪を採取し薄くなった頭頂部や前頭部、額の生え際などに移植しますが、ここで、その採取元である後頭部に着目することで、結論である「植毛業界の闇」に近づいていきたいと思います。

男性型脱毛症(通称AGA)の影響を受けにくく、ドナーとして最も適している健康的な髪の毛は後頭部中央部周辺に集中しています。

植毛の方法がFUTであってもFUEであっても採取する場所は後頭中央部になります。これを「植毛ゴールデンゾーン」と呼ぶことにします。

植毛ゴールデンゾーン

植毛ゴールデンゾーンから採れた髪の毛(ドナー)は、移植先での生着率(移植した髪の毛がちゃんと生えてくる確率のこと)が最も高く、かつ、ほぼ未来永劫AGAの影響を受けないことで知られています。

アデランスやアートネイチャーの増毛法は、人工毛を自毛の根っこに結びつけるため、自毛が抜けると人工毛も抜けてしまいますし、自毛が伸びれば人工毛も「浮いて」しまいますのでメンテナンスが必要です。

その点、植毛ゴールデンゾーンから採取した毛髪は、植毛後は正真正銘患者の生涯の髪の毛となるということです。

ただ一つ難点があります。それは植毛ゴールデンゾーンは有限、つまり採取できる毛髪の量に限界があるということです。

これはFUTでもFUEでもだいたい同じで、欧米人で6,000グラフト、日本人の場合だと5,000グラフト(本数換算すると約1万本)前後になります。

(ここから核心に迫っていきます)
この5,000グラフトですが、植毛医なら誰しもが「最初の1回目の植毛に当たりたい」と思っています。

なぜかというと、最初の1回目であれば採取していい5,000グラフトの好きなところを採取できるので、腕の悪い下手クソな新米植毛医がドナーロス(後頭部からの採取時に採取に失敗してドナーを殺してしまうこと)しまくったとしても、失敗が目立たないというか、実質失敗が分からないからです。

例えば2,000グラフトの採取に挑戦して1,200グラフト成功して800グラフト失敗(ドナーロス)したとしても、5,000のうちの2,000しか採取していないので手術ミスであることがはっきりとは分からないわけです。

で、さらに怖い話をすると、日本国内の植毛クリニックのおよそ8割以上で採用されているメスを使わないFUE法は、良く言えば均等にドナーを採取していくと言えますが、悪く言えば後頭部を「虫食い状態」にしていくわけです。

もっと言うと、「次にこの患者を植毛する植毛医」のことは一切考慮せず、自分のミスが絶対に分からないよう植毛ゴールデンゾーンの広範囲にわたって虫食いにしていきます。

無計画にFUEで大量に毛髪を採取した後頭部
無計画にFUEで大量に毛髪を採取した後頭部

こうなるとどうなるかというと、患者さんのAGAが進行して薄毛の範囲がさらに広がり「2回目の植毛しよっかな」と思って植毛クリニックを訪れた場合、その植毛クリニックは難色を示すと思います。

特に、1回目で新米の植毛医に運悪く当たってしまった患者さんの後頭部はかなりの虫食い状態い状態になっているので、よほどハートの強い植毛クリニックでもない限り植毛を拒否すると思います。

なぜなら、2回目の植毛を実施した後の後頭部は1回目の植毛時よりもさらに悲惨な虫食い状態になってしまい、惨劇に気づいた患者が2回目の植毛クリニックにクレームをつける可能性が高まるというわけです。

考えて見て下さい。ハゲは、男性にとって一番のコンプレックスなわけです。

勇気を振り絞り、財布を振り絞って夢のフサフサ人生を謳歌しようと植毛クリニックを訪れた結果、鏡で見えない後頭部が惨劇とかしていて、他人に失笑されているのかも知れないのです。

そんなこと絶対許せないですよね。

まとめ

怖い話ですよね。薄毛で悩む人が、良心のない植毛クリニックにとってはただのトランプのカードであり、リアル版ババ抜きというゲームの一部に組み込まれているのが今の日本の植毛界の現状だということです。

植毛は「計画」が非常に大事です。計画の立て方は別途記事にしたいと思いますが、急いでいる方向けに結論を言ってしまうと、1回目および2回目の植毛は絶対にFUTで行ってください。

もしよく調べもせずに大手植毛クリニックなどでFUEで初回の植毛を実施してしまった瞬間に、あなたはリアル版ババ抜きの「ジョーカー(ババ)」と化してしまうのです。

男の方にとって夢だったフサフサ人生のはずが、どん底まで突き落とされることになりかねませんので、焦ることなくじっくりゆっくり計画を立て、絶対に後悔しないですむようよくよく考えてから植毛を行ってください。

植毛の計画を立てる

少し怖いデータを出しますが、FUEでのドナーロス率は、医師の手で行うFUE法で25-40%、ロボット植毛で行うFUE法だと45%以上ドナーロスさせています。

自毛植毛クリニックの公式サイトでは自院のドナーロス率は実際のデータの1/2くらいに逆盛り(過少申告)しています。

逆にFUTと呼ばれるメスで切開して一度後頭部から頭皮ごと剥ぎ取って、バックヤードで株分けする方法だと、ドナーロス率は20%以下くらいで済みます。

この事実だけ見ても、植毛はFUEではなくFUTで行ったほうが賢明ですよね。

以上

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