- 「AGAは進行性」とは本当はどういう意味?
- 「AGAグランドライン」とは?生え際のこと?
- 初期段階では脱毛予防を真っ先に考えるべき
- ある程度進行すると薬は飲まないほうがいい理由とは

こんにちは。内科総合クリニック人形町所属の毛髪診断士です。AGA治療歴25年で自毛植毛も経験済みです。
この記事であなたに持ち帰ってもらいたいものは
「AGAは治療開始時点の残毛量の10%程度しか回復しないので、できるだけ早く脱毛予防をする。そして進行しすぎている場合は薬を飲まない選択肢も考えて欲しい。」
ということです。
例えば額の生え際です。ある程度後退してから薄毛治療を始めても回復するのは容易ではなく、実際にところ治療を開始した生え際のラインを押し下げるのは西洋医学では難しいのが現実なのです。
ここから先は、当院院長の藤田先生の知見を借りながら「薄毛最前線」について解説していきます。
「AGAは、進行性。」は実はかなり重要な命題です

上記の画像は、大手AGA専門クリニックの広告宣伝で、画像内に目立つ文字で「AGAは、進行性。」と書いてあります。
薄毛で悩んでいる人なら、AGA(薄毛)はどんどん進行していくことは何となく知っていますよね。ある程度「徐々に後退していくんだろうな」と覚悟を持っていらっしゃる方もいると思います。
ここで確認しておきたいのは、そんな誰もが知っていそうなことを、なぜ大手クリニックの宣伝を例にしてこの記事でわざわざ取り上げたのか?という点。
おそらくこの大手クリニックが広告で伝えたいのは、「AGAは放っておくと、どんどん進行して手遅れになるから早くウチに診察にきてくださいね。」ということです。
治療の開始が早ければ早いほど得られる結果は確かなものになるので、この大手クリニックの宣伝文句に難癖をつけるつもりはありません。
でも私があなたに知っておいて欲しいことは、AGAは進行性の症候なのでまずは発毛させることを考えるより、薄毛の進行を止めることが最優先、ということです。


経口薬(飲み薬)での治療を含めてありとあらゆることをやってきたと聞いています。実際問題として、薄毛の進行は止められないものでしょうか?

止められないですね。遺伝にもよると思いますが、やはりどんなにがんばっても少しづつ少しづつ額(ひたい)は後退し頭頂部は薄くなっていきます。

解説いたします
薄毛治療で一番大切なことは、発毛させることよりも、できるだけ早期に治療を開始して薄毛の進行を可能な限り抑えることです。
大事なことなのでもう一度言わせてくださいね。薄毛対策で一番大切なことは発毛より脱毛予防です。フサフサに戻したいという気持ちは痛いほど分かるし、何とかしてあげたいと心から願って治療にあたりますが、AGAは進行性症候なので「早期治療で進行を抑えること」が大変重要になってきます。
もし早期にAGAの進行を抑える手を打たないとどうなるのでしょうか?「AGAグランドライン」が大幅に下がってしまいます。
「AGAグランドライン」とは、これ以上は回復しないですよというデッドラインのこと
「偉大なる航路」ではありません。ワンピースの読みすぎですよ。私もワンピース大好きですが(笑)
グランドライン(ground line)は一般的には「区画線」「基線」などと訳すことが多いと思われます。隣接する2つ以上の区画の境界線のことをグランドラインと呼び、土地の境界線みたいなものです。

AGAの文脈でのグランドラインの意味は、治療を開始した時点、もっと具体的にいえば「脱毛予防薬であるプロペシアを飲み始めた時点での髪の毛の残りの本数」と思ってください。これを「AGAグランドライン」と私は呼んでいます。
日本人の髪の毛の本数は平均10万本といわれており、例えば、AGAになって2万本抜けた残り8万本の時点で治療をスタートしたとしましょう。その8万本がAGAグランドラインということになり、以降いくら治療をしてもせいぜいそこから1割増しの88000本くらいまでしか回復しません。
いち早くAGAに気づいて1万本抜けた時点で治療を開始すれば、9万本以上のままがんばることができる可能性はあります。9万本以上もあれば薄毛であることがバレることはないので、理想的なタイミングで治療が出来たということです。
しかし治療の開始(プロペシアの服用開始)が遅れて、あるいは飲んでいたものの途中で中断してしまい、AGAグランドラインが下がってくると回復する絶対量も下がります。式にするとだいたいこんな感じです。
復活できる髪の毛の本数 = プロペシアを飲み始めた時の残本数 × 0.1倍
数字だと分かりにくいと思うので、有名人で例えるなら、ソフトバンクの孫正義さんが今からプロペシアを飲んで脱毛予防してがんばって治療しても、決して東方仗助(4代目ジョジョ)やお笑い芸人のみやぞんさんのようにはなりません。せいぜい笑福亭鶴瓶さんくらいまでしか回復しないのです。

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これが進行性の症候であるAGA(男性型脱毛症)の怖いところです。できるだけ早く気付いて、というよりできるだけ早く「自分はAGAであるんだ」ということを受け入れて、いち早く行動していただけることを願っています。
そうしないとAGAグランドラインがどんどん下がっていってしまい手遅れになってしまいます。
AGAの初期段階で必要なのは発毛ではなく脱毛予防
薄毛になると、焦ってしまい発毛させることばかり考えてしまいがちですが、長く続く人生を考えた場合、大事なのは発毛ではなく脱毛予防。AGAグランドラインを今より下げずに食い止めることです。
具体的な名前を出して説明すると、最初に考慮してくただきたいのは育毛剤ではなく脱毛予防薬(飲み薬)であるプロペシアです。

いち早くプロペシアを飲んでAGAの進行を抑えないと、いくら育毛剤やミノタブ、LED照射などで発毛に後々成功したとしても、治療で回復するのは全毛量の1割程度です。発毛に成功して1割の髪が戻ったとしても、抜けるスピードのほうが早いため髪の毛は減ってしまいます。
経済的に余裕がある方であれば、プロペシアと同時にミノキシジルなどの発毛系治療という方法もありますが、AGAが進行性の症候である以上、最重要は脱毛予防です。経済的に余裕がない方は、育毛剤などの発毛治療は諦めてプロペシアだけ飲んで脱毛予防に専念してください。それが一番経済的な治療法です。
順番を明確にさせますね。プロペシアが先で育毛剤が後です。多くの人が育毛剤から治療を始めるのですが、これは間違いなので注意してください。育毛剤に脱毛予防効果はないのでプロペシアが先です。
AGAが中期以降にまで進行していた場合は経口薬治療は諦めてウィッグを検討するほうが安上がりのケースも

薄毛治療歴25年の私の経験を話します。
大手のAGA専門クリニックに通うと安くても年間で30万円くらい治療費がかかります。通常は月3万円なので年36万円が大手クリニックの相場です。
実はこの年30~36万円という金額、このお金を使って2つのことが可能です。自毛植毛とウィッグです。
AGAクリニックでの治療は1年では終わりません。基本的に永遠に続きます。薬をやめると薄毛が進行するので「永遠」なのです。5年続けると150万円。この150万円があれば自毛植毛の第一回が受けられます。※自毛植毛手術は3回に分けるのが原則
ウィッグは、名前を聞くだけで敬遠しがちでしょうけど、100%フサフサになれることを保証してくれるのは結局ウィッグだけ。芸能人は全員ウィッグです。植毛している人なんて一握りです。
多くの人が全盛時の自分を夢見るし、名医と言われている先生のところに行けばフサフサになると思われるかも知れません。しかし何度もお伝えしているように、治療開始時点から1割増しが薬の効果の限界です。
他の薄毛専門サイトを見てみると、まるで大手クリニックに行けばフサフサになるような印象を受けてしまいますが、AGAグランドラインがある以上、そんなことは絶対に起きえません。

あなたを絶望に落とすために言っているのではなく、AGA治療歴25年超の私の経験からそう言っているのです。「フサフサになります」とウソをついてあなたに希望を与えることは簡単です。私は医師ではないのでウソをついても罪にはならないし。
でも、私が真実を隠すことによって最後に絶望するのはあなたです。私は、しかってくれない学校の先生や、甘やかすことしかできない親にはなりたくありません。誰かが言わなくてはならないのなら、正直に真実を言えるのは薄毛で20年も悩み続け散財し続けてきた私以外にないと思っています。
私も、最初に発毛治療をしたころはびっくりするくらいフサフサになりました。嬉しくなって、求められてもいないのに人前で前髪をかけあげたこともあります。でも、それはせいぜい2年くらいしか続かず、油断してプロペシアの服用をやめたことでAGAグランドラインが下がり、取返しがつかなくなってしまいました。

なので、遅くに(AGAがある程度進行して)治療を開始することになったなら、金の無駄になってしまう可能性があるので、安易にAGAクリニックに行かずに、踏みとどまってよくよく自問自答してほしいんです。何を自問自答するかというと、
- 現時点から髪の毛を1割増やすために大金を投じる
- 同じ額を払って転勤のタイミングなどでウィッグをかぶる
- 自毛植毛を検討する
この3択です。どれが正しいというものはありませんが、絶対に正しくないのは薬の治療でフサフサに戻れるという誤解です。私のようにフサフサという非現実な夢を追い求めて散財して人生を壊すようなことはして欲しくないのです。
「フサフサになれる」と私だって信じたい。でも残念ながらそれは現実ではありませんでした。もう25年以上勉強に勉強を重ね1,500万円以上を髪の毛に投資してきましたので、AGA治療の不都合な真実に私はあなたより先にたどり着いてしまったんです。
私にできることは、薄毛の先輩として正確な情報を誠実にあなたに届けること、ただそれだけです。
まとめ
AGAグランドラインを下げないために、脱毛予防薬であるプロペシアを「いつ飲み始めたか」「継続して飲み続けているか」が大変重要ということがお分かりいただけたと思います。
また、AGA治療で何をすればいいかよく分からないまま3年5年と時間が経過し薄毛がある程度進行してしまっている場合、「これから始めるにあたりどの治療にお金を投資すれば望む結果が得られるか。」を見極めることは大切だということもよく分かりました。
この記事のまとめは以下となります。
- やるべき事は発毛よりもまずは脱毛予防。AGAグランドラインを死守せよ
- 治療を何もせず長く(10年など)放置してしまった場合、最初からウィッグを検討してみる
以上
この記事を書いた医師

内科総合クリニック人形町 院長
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
東京大学医学部保健学科および横浜市立大学医学部を卒業
東京大学付属病院や虎の門病院等を経て2019年11月に当院を開業
最寄駅:東京地下鉄 人形町駅および水天宮前駅(各徒歩3分)