マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は2型糖尿病の治療薬として承認された注射薬ですが、「糖尿病じゃなくても使えるの?」と気になっている方は多いのではないでしょうか。結論から言えば、マンジャロ自体の適応はあくまで2型糖尿病に限られます。
しかし2025年4月、マンジャロと同じ有効成分「チルゼパチド」を含む肥満症治療薬「ゼップバウンド」が日本で発売されました。糖尿病のない方でも、一定の条件を満たせば医師の管理のもとでチルゼパチドによる治療を受けられる道が開けています。
この記事では、マンジャロの処方ルールからゼップバウンドとの違い、副作用のリスク、自由診療の注意点まで、非糖尿病の方が知っておくべき情報を丁寧にまとめました。
マンジャロは糖尿病でなくても処方してもらえるのか

マンジャロの処方対象は、日本の承認上「2型糖尿病」と診断された患者に限定されています。糖尿病の診断がない方に対して、医師がマンジャロを処方することは、原則として認められていません。
マンジャロが2型糖尿病専用薬である理由
マンジャロの有効成分であるチルゼパチドは、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)という2つのホルモンの受容体に同時に作用する薬剤です。血糖値が高いときにインスリンの分泌を促し、血糖コントロールを改善するために開発されました。
日本では2023年4月に2型糖尿病治療薬として発売されており、食事療法や運動療法を行っても血糖値が十分に改善しない患者さんが対象となっています。つまりマンジャロは、あくまで血糖管理を目的とした医薬品なのです。
糖尿病じゃない人がマンジャロを使いたがる背景
| 関心が高まる要因 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 体重減少効果の報告 | 臨床試験で平均5〜10kg超の減量データが公表された |
| SNSでの拡散 | 美容目的で使用した体験談が若い女性を中心に広がった |
| 海外での承認状況 | 米国では同成分が肥満症治療薬として承認済み |
日本糖尿病学会が出した「適応外使用」への警告
日本糖尿病学会は2023年4月、「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」を公表しました。この声明のなかで、糖尿病のない方へのダイエット目的での使用は認められないと明確に警告しています。
学会が特に懸念しているのは、安全性が十分に検証されていない使い方が広がることによる健康被害です。副作用が起きた場合に「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となるリスクもあり、自己判断での使用は避けるべきでしょう。
マンジャロとゼップバウンドは同じ成分なのに何が違うのか

マンジャロとゼップバウンドは、いずれも有効成分として「チルゼパチド」を含む注射薬です。両者の決定的な違いは、承認された適応症にあります。マンジャロは2型糖尿病、ゼップバウンドは肥満症を治療対象としています。
チルゼパチドというGIP/GLP-1受容体作動薬の仕組み
チルゼパチドは、食事のあとに小腸から分泌されるインクレチンと呼ばれるホルモンの働きを模倣する薬です。GIPとGLP-1の2つの受容体に同時に作用する「デュアルアゴニスト」であり、従来のGLP-1単独の薬よりも強力な血糖降下作用と体重減少効果を発揮します。
脳の食欲中枢に作用して食欲を抑え、胃の内容物の排出を遅らせることで満腹感を長く持続させます。さらに脂肪組織の代謝を改善し、脂肪の燃焼を促進する作用も報告されています。
ゼップバウンドが2025年4月に日本で発売された経緯
チルゼパチドは、米国では2023年11月に肥満症治療薬「Zepbound」としてFDAの承認を取得しています。日本でも大規模な臨床試験(SURMOUNT-J試験)が日本人を対象に実施され、72週間の投与で10mg群が17.8%、15mg群が22.7%の体重減少を達成しました。
この結果を受けて2024年12月に肥満症への適応で製造販売承認を取得し、2025年3月に薬価収載、同年4月11日にゼップバウンドとして発売されています。約30年ぶりとなる新しい肥満症治療薬の登場は、医療現場でも大きな注目を集めました。
「マンジャロで痩せる」と「ゼップバウンドで治療する」は根本的に別物
ダイエット目的でマンジャロを使うことと、医師の管理のもとで肥満症の治療としてゼップバウンドを使うことは、まったく性質が異なります。前者は適応外使用にあたり、副作用が生じても公的な救済制度の対象外です。
一方、ゼップバウンドは肥満症という病気の治療薬として正式に承認されたものであり、決められた条件を満たす患者に対して医学的根拠に基づいて処方されます。安易な痩身目的とは明確に線引きされている点を理解しておきましょう。
| 比較項目 | マンジャロ | ゼップバウンド |
|---|---|---|
| 適応症 | 2型糖尿病 | 肥満症 |
| 有効成分 | チルゼパチド | チルゼパチド |
| 発売年 | 2023年4月 | 2025年4月 |
| 処方施設 | 一般的な医療機関 | 大規模医療機関が中心 |
糖尿病じゃない人がチルゼパチドを使うための条件とは

糖尿病の診断がなくても、肥満症の治療薬であるゼップバウンドを通じてチルゼパチドによる治療を受けられる場合があります。ただし、厚生労働省が定めた厳格な適応条件を満たす必要があります。
ゼップバウンドの適応対象となるBMIと合併症の基準
ゼップバウンドの適応は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有する肥満症の患者さんで、食事療法と運動療法を行っても十分な効果が得られない場合に限られます。さらにBMIの数値と肥満に関連する健康障害の組み合わせによって対象が決まります。
具体的にはBMIが35以上の高度肥満症か、BMIが27以上で肥満に関連する健康障害(耐糖能障害、脂質異常症、高血圧、脂肪肝など)を2つ以上持っている方が対象です。単に「太っているから使いたい」というだけでは処方を受けられません。
| 対象区分 | BMI基準 | 必要な条件 |
|---|---|---|
| 高度肥満症 | 35以上 | 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを合併 |
| 肥満症 | 27以上 | 肥満関連の健康障害を2つ以上合併 |
処方できる医療機関は大学病院などに限られる
ゼップバウンドは厚生労働省が定めた使用推進ガイドラインの対象薬剤に指定されており、処方できる医療機関にも制限があります。日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会のいずれかから教育研修施設として認定された医療機関でなければ処方できません。
そのため、多くの場合は大学病院や総合病院といった大規模医療機関を受診する必要があります。近所のクリニックで気軽に処方してもらえる薬ではないという点に注意が求められます。
食事療法・運動療法を先に行うことが前提になる
ゼップバウンドの処方を受けるには、事前に食事療法と運動療法に取り組んでいることが大前提となります。臨床試験でも、管理栄養士によるカウンセリングのもとでカロリー制限と運動を併用する条件で実施されました。
「薬だけで痩せたい」という考えでは処方対象にならないでしょう。生活習慣の改善に真剣に取り組んだうえで、それでも十分な効果が得られない場合に初めて薬物療法の選択肢として浮上するのがゼップバウンドです。
マンジャロを自由診療で処方する美容クリニックに潜むリスク

糖尿病でない方がマンジャロを手に入れるもうひとつの手段として、美容クリニックなどによる自由診療があります。しかし、自由診療には見過ごせないリスクがいくつも潜んでいます。
「オンライン診療で簡単に手に入る」という落とし穴
SNSやインターネット広告では「オンライン診療ですぐに処方」「来院不要で自宅に届く」といった手軽さを強調するクリニックが見受けられます。しかし、短時間のオンライン問診だけで身体の状態を十分に把握できるとは限りません。
マンジャロは注射薬であり、適切な使い方や副作用への対処法を理解しないまま使用すると健康被害につながるおそれがあります。安易な処方が横行している現状には、医療関係者からも懸念の声が上がっています。
副作用被害救済制度の対象にならないという深刻な問題
マンジャロを2型糖尿病の治療以外の目的で使用した場合、万が一重い副作用が生じても「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となります。この制度は、承認された用法・用量に基づいて適正に使用した場合に限り、医療費や障害年金などの給付を受けられるものです。
ダイエット目的の適応外使用は適正使用に該当しないため、すべての医療費を自己負担で賄わなければなりません。この事実は、多くの利用者が十分に認識できていないのではないでしょうか。
本来必要とする糖尿病患者に薬が届かなくなるおそれ
ダイエット目的でマンジャロを使う人が増えると、2型糖尿病の治療で本当に必要としている患者さんに薬が行き渡らなくなるリスクがあります。実際に2023年から2024年にかけて、需要の急増に伴い一時的な出荷制限が実施された経緯があります。
命に関わる持病を抱えた方の治療に支障をきたしかねないという点は、社会的にも見過ごせない問題です。自分の体重を減らしたい気持ちは理解できますが、ほかの患者さんへの影響も考慮したうえで判断したいものです。
- 自由診療の費用:月額2万〜4万円程度(用量により変動)
- 診察料・クール便代が別途加算されるケースもある
- 副作用が出ても公的な補償制度を利用できない
- オンライン診療だけでは十分なモニタリングが難しい
マンジャロの副作用は糖尿病じゃない人にとってより危険なのか

マンジャロの代表的な副作用は、吐き気・下痢・便秘などの消化器症状です。糖尿病のある方もない方も副作用の種類は基本的に共通しますが、非糖尿病者特有の注意点も存在します。
消化器症状は非糖尿病者にも同じように起きる
マンジャロの投与を始めると、多くの方が初期段階で吐き気や胃の不快感を経験します。胃の内容物の排出を遅らせる作用が強いため、食べたものがなかなか消化されない感覚に戸惑う方も少なくないでしょう。
これらの症状は用量を段階的に増やすことである程度軽減できますが、体質によっては長期にわたって続くケースもあります。「痩せるため」と我慢して無理に使い続けると、栄養不足や脱水など二次的な健康被害を招きかねません。
| 副作用の種類 | 頻度 | 注意点 |
|---|---|---|
| 吐き気 | 高い | 投与初期に強く出やすい |
| 下痢・便秘 | やや高い | 水分補給と食事内容の調整が必要 |
| 食欲低下 | 高い | 過度な体重減少に注意 |
| 急性膵炎 | まれ | 激しい腹痛が出たらすぐ受診 |
医師の管理なしに使うと低血糖やアレルギーを見逃す
マンジャロ単独では低血糖のリスクは低いとされていますが、食事を極端に減らした状態で使用すると血糖値が下がりすぎる危険があります。冷や汗、手足の震え、動悸、強い空腹感といった低血糖の症状を正しく認識できないまま放置すると、意識障害にまで至る可能性も否定できません。
加えて、まれにアナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応が報告されています。定期的な血液検査や診察を受けずに自己判断で継続することは、リスクの発見が遅れる原因となります。
「急に痩せすぎる」ことが体に与えるダメージも見逃せない
体重が急激に減少すると、筋肉量の低下や骨密度の減少、胆石の形成リスク上昇など、さまざまな身体的ダメージが生じる可能性があります。とくに栄養摂取が不十分なまま薬の力だけで体重を落とすと、基礎代謝が下がりリバウンドしやすい体質になりかねません。
マンジャロによる減量は、あくまでバランスの取れた食事と運動習慣を土台としたうえでの補助的な手段であるべきです。薬を中止したあとにどうやって体重を維持するかまで含めて、長期的な視点で治療計画を立てることが大切です。
非糖尿病でも安全にチルゼパチドを使うために守りたい5つのルール

糖尿病のない方がチルゼパチドによる治療を安全に受けるためには、正規の医療機関で専門医の管理を受けることが何よりも大切です。以下の5つのルールを心がけてください。
肥満症の専門外来がある医療機関を受診する
ゼップバウンドの処方を希望するなら、まずは肥満症外来のある大学病院や総合病院を受診しましょう。内分泌内科や糖尿病内科を併設する施設であれば、チルゼパチドの扱いに精通した医師のもとで安心して治療を受けられます。
自由診療のオンラインクリニックではなく、対面でしっかりと身体の状態を診てもらうことが、安全な治療への第一歩となるでしょう。
定期的な血液検査と体重モニタリングを怠らない
チルゼパチドの投与中は、肝機能・腎機能・膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)などの定期的なチェックが推奨されます。副作用の兆候を早期に発見し、必要に応じて用量の調整や投与の中止を判断してもらうために欠かせません。
体重の減少ペースも医師と共有しながら管理することで、急激な体重減少による身体へのダメージを防ぐことができます。
食事療法と運動療法を薬と「併走」させる意識を持つ
薬による食欲抑制効果に頼りきるのではなく、管理栄養士の指導を受けながらバランスの良い食事を維持することが治療の成功を左右します。臨床試験でもカロリー制限と運動療法を並行しており、薬だけの効果を測定したわけではありません。
適度な有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることで、筋肉量を維持しながら脂肪を減らす「質の高い減量」を目指せます。投与を終了したあとのリバウンド防止にも、こうした習慣が支えとなるでしょう。
| ルール | ポイント |
|---|---|
| 専門医のいる施設を選ぶ | 内分泌内科・糖尿病内科のある大規模医療機関が望ましい |
| 定期検査を受ける | 肝機能・腎機能・膵酵素を定期的にチェックする |
| 食事療法を続ける | 管理栄養士の指導のもとでバランスの良い食事を維持する |
| 運動を習慣化する | 有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる |
| 薬の中止後も体重管理を続ける | リバウンド防止のため生活習慣を定着させる |
マンジャロとGLP-1ダイエットに関する誤解を正しておきたい

インターネットやSNS上には、マンジャロやGLP-1ダイエットに関する不正確な情報が数多く出回っています。正しい知識を持つことが、後悔しない選択につながります。
「マンジャロは誰でも簡単に痩せられる魔法の薬」ではない
- 適応外使用は日本糖尿病学会が明確に警告を出している
- 副作用による健康被害のリスクがある
- 薬をやめれば食欲が戻りリバウンドする可能性が高い
- 生活習慣の改善なしに長期的な減量維持は困難
「GLP-1ダイエットは安全」という広告は鵜呑みにしない
「GLP-1ダイエット」という言葉は、あたかも手軽で安全な減量法であるかのような印象を与えます。しかし、GLP-1受容体作動薬は本来医師の管理のもとで使用するべき医療用医薬品であり、健康食品やサプリメントとは根本的に異なります。
消化器症状以外にも、急性膵炎や腸閉塞といった重篤な副作用のリスクが報告されています。広告の印象だけで判断せず、医薬品としてのリスクとベネフィットを正しく理解したうえで検討してください。
「糖尿病予防のために使いたい」という動機は正当なのか
海外の臨床試験では、肥満で糖尿病予備軍の方にチルゼパチドを投与した結果、3年間で糖尿病の発症を93%抑制できたというデータが報告されています。しかし、現時点の日本ではマンジャロの適応はあくまで2型糖尿病に限られます。
糖尿病予防という理由であっても、マンジャロを予防的に使用することは認められていません。肥満症の治療としてゼップバウンドの適応基準を満たす場合には、結果的に糖尿病の発症予防につながる可能性はありますが、予防そのものを目的とした処方はできない点を押さえておきましょう。
よくある質問
- マンジャロは糖尿病と診断されていない人でも処方を受けられる?
-
マンジャロの処方は、日本の承認上2型糖尿病と診断された患者に限定されています。糖尿病の診断がない方は、原則としてマンジャロの処方対象にはなりません。
ただし、マンジャロと同じ有効成分(チルゼパチド)を含む肥満症治療薬「ゼップバウンド」であれば、BMIや合併症に関する一定の基準を満たすことで、糖尿病の診断がなくても医師の判断のもとで処方を受けられる場合があります。
- マンジャロをダイエット目的で使用した場合の副作用は?
-
マンジャロの副作用は、ダイエット目的であっても糖尿病治療目的であっても基本的に同じです。代表的な症状は吐き気、下痢、便秘、食欲低下といった消化器系の症状で、投与初期に強く出やすい傾向があります。
まれに急性膵炎やアナフィラキシーなどの重篤な副作用も報告されているため、必ず医師の管理のもとで使用してください。適応外使用の場合は医薬品副作用被害救済制度の対象外となるため、すべてのリスクを自己責任で負う必要があります。
- マンジャロとゼップバウンドの有効成分はまったく同じなのか?
-
はい、マンジャロとゼップバウンドの有効成分はいずれもチルゼパチドであり、薬としての中身は同一です。違いは承認された適応症にあり、マンジャロは2型糖尿病の治療、ゼップバウンドは肥満症の治療を目的としています。
注射デバイスも同じ「アテオス」が採用されており、週1回の皮下注射という投与方法も共通しています。ただしゼップバウンドには7.5mgと12.5mgという用量が追加されており、よりきめ細かな用量調整ができるようになっています。
- マンジャロの投与をやめたあとにリバウンドする可能性は?
-
マンジャロの投与を中止すると、食欲が元に戻り体重が増加する可能性は十分にあります。薬による食欲抑制や胃排出遅延の効果がなくなるため、以前と同じ食事量に戻ってしまう方も少なくありません。
リバウンドを防ぐためには、投与期間中に食事療法と運動療法をしっかりと身につけ、薬をやめたあとも続けられる生活習慣を定着させることが大切です。医師と相談しながら、段階的に用量を減らしていく方法も検討されます。
- マンジャロの自由診療にかかる費用はどのくらい?
-
自由診療でマンジャロを使用する場合、費用は医療機関によって異なりますが、一般的に2.5mgで月額2万〜3万円程度、5mgで3万〜4万円程度が相場とされています。診察料やクール便代が別途加算されることもあり、実際の負担額はさらに大きくなるケースもあるでしょう。
治療期間が長くなるほど経済的な負担は膨らみます。費用対効果をよく考えたうえで、本当に自由診療が自分にとって適切な選択肢なのか、慎重に検討してください。
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