腎臓内科の外来では「マンジャロは腎臓に影響がありますか」「腎機能が低下していても使えますか」といった質問を多くいただきます。肥満と腎臓病は密接に関わっており、体重管理が腎機能の維持に大きく貢献することがわかっています。
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)はGIPとGLP-1という2つのホルモン受容体に作用する注射薬で、体重減少効果に加えて腎臓への好影響も報告されています。この記事では、腎臓内科医の視点から、外来で実際に寄せられるマンジャロに関する疑問をQ&A形式でまとめました。
正確な情報をもとに不安を解消し、主治医と相談しながら治療方針を考える手がかりにしていただければ幸いです。
マンジャロとは何か|腎臓内科で注目される肥満治療薬の特徴

マンジャロは、GIP受容体とGLP-1受容体の両方に働きかける「デュアルアゴニスト」と呼ばれるタイプの注射薬です。週1回の皮下注射で投与し、食欲を抑えながら血糖値の改善と体重減少を同時にめざせる点が特徴といえます。
マンジャロが従来のGLP-1受容体作動薬と異なる点
セマグルチドやリラグルチドといった従来のGLP-1受容体作動薬は、GLP-1受容体のみに作用します。一方、マンジャロはGIP受容体にも結合するため、インスリン分泌の促進やエネルギー代謝の調整がより幅広く行われると考えられています。
臨床試験(SURPASS-2)では、マンジャロがセマグルチドと比べてHbA1cの低下幅や体重減少量でより大きな効果を示しました。腎臓内科の立場からも、体重減少に伴う腎臓への負担軽減が期待できる薬剤として関心が寄せられています。
週1回の注射で続けやすい投与スケジュール
マンジャロは週に1回、自分で皮下注射する薬です。毎日の服薬が難しいと感じる方にとって、週1回というペースは治療を継続しやすいでしょう。ペン型の注射器は操作がシンプルで、医療機関で指導を受ければご自宅でも安心して使用できます。
マンジャロの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | チルゼパチド |
| 作用機序 | GIP/GLP-1デュアル受容体作動薬 |
| 投与方法 | 週1回 皮下注射 |
| 用量 | 2.5mg〜15mg(段階的に増量) |
| 承認適応 | 2型糖尿病 |
肥満と腎臓病の関係から見たマンジャロへの期待
肥満は腎臓に過剰な負荷をかけ、糸球体(しきゅうたい)と呼ばれる血液をろ過する部分の圧力を上昇させます。この状態が長く続くと、腎機能の低下やたんぱく尿の増加につながりかねません。
そのため、体重を適切に管理することは腎臓を守るうえで大切です。マンジャロの体重減少効果が腎臓へどのような影響を及ぼすか、多くの研究者が注目しています。
腎機能が低下していてもマンジャロは使えるのか

腎機能が低下している患者さんでも、マンジャロは用量調整なしで使用できると報告されています。これは多くの患者さんにとって安心材料となるでしょう。
腎障害の程度とマンジャロの薬物動態に関する研究結果
マンジャロの薬物動態(体内での薬の動き)を調べた研究では、軽度・中等度・重度の腎障害、さらには透析が必要な末期腎不全の患者さんでも、薬の血中濃度に大きな差は認められませんでした。マンジャロは主にペプチド代謝によって分解されるため、腎臓による排泄に依存しにくいのです。
こうした結果から、腎機能の程度に応じた用量変更は不要とされています。ただし、個々の患者さんの状態は異なりますので、必ず主治医の判断に従ってください。
透析中の患者さんへの使用について
透析を受けている方にもマンジャロの投与は可能です。薬物動態の研究では、透析の有無によって薬の血中濃度がほとんど変化しないことが確認されました。
ただし、透析中の患者さんは全身状態が複雑なため、開始にあたっては腎臓内科医と糖尿病専門医が連携して判断することが望ましいといえます。消化器症状(吐き気や下痢)が出た場合に脱水を起こしやすい点にも注意が必要です。
腎臓内科とかかりつけ医の連携で安全に治療を進める
マンジャロを腎疾患のある患者さんに使用する際は、腎臓内科の専門医とかかりつけ医が情報を共有しながら経過を見守ることが大切です。定期的な血液検査や尿検査で腎機能の推移を確認し、副作用の兆候がないか注意深く観察しましょう。
腎機能の段階別にみたマンジャロの使用可否
| 腎機能の段階 | eGFR目安 | 用量調整 |
|---|---|---|
| 正常 | 90以上 | 不要 |
| 軽度低下 | 60〜89 | 不要 |
| 中等度低下 | 30〜59 | 不要 |
| 高度低下 | 30未満 | 不要 |
| 透析中 | — | 不要 |
マンジャロは腎臓を守れるのか|アルブミン尿やeGFRへの影響

複数の臨床試験で、マンジャロがアルブミン尿(UACR)を低下させ、腎機能の指標であるeGFRに悪影響を与えないことが示されています。腎臓を守る効果への期待は高まっています。
SURPASS-4試験で確認されたアルブミン尿の改善
2型糖尿病で心血管リスクの高い患者さんを対象にしたSURPASS-4試験の事後解析では、マンジャロ投与群はインスリングラルギン投与群と比べてUACRが有意に低下しました。加えて、eGFRの低下速度も緩やかであったと報告されています。
アルブミン尿の減少は腎臓病の進行を遅らせる兆候として重要です。マンジャロがこの指標に好影響を与えた点は、腎臓内科の分野で大いに注目されています。
SURMOUNT-1・2試験における腎パラメータの変化
糖尿病のない肥満患者さんを対象にしたSURMOUNT試験でも、マンジャロ投与群ではプラセボ群と比較してUACRの低下が確認されました。とくにベースラインのUACRが30mg/g以上だった方では、その低下幅がより顕著でした。
主要臨床試験におけるマンジャロの腎関連指標
| 試験名 | 対象 | UACR変化 |
|---|---|---|
| SURPASS-4 | 2型糖尿病・高心血管リスク | 有意に低下 |
| SURMOUNT-1 | 肥満(糖尿病なし) | プラセボ比で低下 |
| SURMOUNT-2 | 肥満+2型糖尿病 | プラセボ比で顕著に低下 |
体重減少と腎保護効果はどこまで関連しているか
マンジャロの腎保護的な作用が、体重減少だけで説明できるのか、それとも薬そのものに直接的な腎保護効果があるのかは、現在も研究が進められている段階です。因果的媒介分析では、体重やHbA1cの改善がUACR低下の一部を説明するものの、それだけでは説明しきれない独立した効果も示唆されています。
マンジャロの副作用で腎臓に気をつけたいこと

マンジャロの副作用の多くは消化器系の症状(吐き気・下痢・嘔吐など)であり、腎臓に直接ダメージを与えるものではありません。しかし、脱水を通じて間接的に腎機能へ影響する場合があるため注意が必要です。
消化器症状から脱水につながるリスクを見逃さない
マンジャロの代表的な副作用は吐き気、下痢、嘔吐です。これらの症状は軽度から中等度のものが多く、投与開始時や増量時に出やすい傾向があります。多くの場合、時間とともに軽減するものの、嘔吐や下痢がひどい場合は体内の水分が失われ、脱水状態に陥ることがあります。
脱水は腎臓への血流を低下させ、急性腎障害を引き起こす可能性をはらんでいます。症状がつらいときは我慢せず、早めに医療機関へ相談しましょう。
腎臓内科の外来で伝えている脱水予防の工夫
吐き気があっても、少量ずつこまめに水分を摂ることが脱水予防の基本です。経口補水液やスポーツドリンクを常備しておくと安心でしょう。とくに夏場や運動後は意識的に水分を補給してください。
食事量が極端に減ると栄養不足にもつながりますので、食べられるものを少しずつ口にすることも大切です。消化器症状が2〜3日以上続く場合は、主治医に連絡して投与量や投与間隔の調整を検討してもらいましょう。
急性腎障害のリスクと定期検査の大切さ
GLP-1受容体作動薬全般で稀に急性腎障害の報告がありますが、マンジャロとセマグルチドを比較したFAERS(米国有害事象報告システム)の解析では、マンジャロのほうが急性腎障害の報告頻度は低かったとされています。
とはいえ、腎疾患を抱える方は定期的に血液検査(クレアチニン・eGFR)と尿検査(UACR)を受けることが重要です。早期に異常を発見できれば、適切な対応が可能になります。
マンジャロの主な消化器系副作用と頻度
| 副作用 | 頻度の目安 | 対策 |
|---|---|---|
| 吐き気 | やや多い | 少量ずつ食事・水分摂取 |
| 下痢 | やや多い | 経口補水液で水分補給 |
| 嘔吐 | 中程度 | 症状が続けば受診 |
| 便秘 | 中程度 | 食物繊維・水分を意識 |
| 食欲低下 | やや多い | 栄養バランスに配慮 |
マンジャロの投与量はどう決まるのか|増量ペースと腎臓への配慮

マンジャロは2.5mgから開始し、4週間ごとに2.5mgずつ増量して維持用量(5mg・10mg・15mg)を決定します。腎機能による用量制限はありませんが、副作用の出方をみながら慎重に増量することが大切です。
2.5mgから始める段階的な増量スケジュール
マンジャロは最初の4週間を2.5mgで開始し、その後4週間ごとに増量していきます。この段階的な増量は、消化器系の副作用を最小限に抑えるために設けられた仕組みです。多くの方は5mgへの増量時に多少の吐き気を感じますが、体が薬に慣れると症状は落ち着いてきます。
腎疾患のある方が増量時に注意すべき点
腎疾患をお持ちの方は、増量時の消化器症状による脱水リスクに特別な注意を払う必要があります。増量のたびに水分摂取量を意識し、体重や尿量の変化に目を配りましょう。
- 増量の前後1週間は水分を多めに摂る
- 体重が急に減った場合は脱水の可能性を疑う
- 尿の色が濃くなったら水分が不足しているサイン
- 吐き気が強い場合は次回の増量を見送ることも検討
主治医と相談しながら自分に合った維持用量を見つける
維持用量は一律に15mgをめざすものではありません。5mgや10mgでも十分な効果が得られる方は少なくないでしょう。副作用と効果のバランスを見ながら、ご自身にとって無理のない用量を主治医と一緒に決めていくことが長期的な治療成功のカギとなります。
マンジャロを使いながら腎臓を守る食事と運動のコツ

マンジャロの効果を引き出しつつ腎臓を守るには、薬だけに頼らず食事と運動にも目を向けることが大切です。減塩やたんぱく質の適正摂取、無理のない有酸素運動を組み合わせましょう。
減塩を意識した食事で腎臓への負担を軽くする
塩分の摂りすぎは血圧を上昇させ、腎臓のろ過機能に余計な負荷をかけます。1日あたりの塩分摂取量を6g未満に抑えることを目標にするとよいでしょう。味噌汁は1日1杯にする、加工食品の利用を控えるなど、日々の工夫が腎臓を守る助けになります。
たんぱく質の量は主治医の指示に従う
腎機能が低下している場合、たんぱく質の過剰摂取は腎臓に負担をかけます。一方で、マンジャロによる体重減少の過程で筋肉量が落ちすぎないよう、適度なたんぱく質の確保も欠かせません。
どの程度のたんぱく質が適切かは腎機能の程度によって異なりますので、主治医や管理栄養士に相談して個別に調整してもらうのが安全です。
ウォーキングなど負担の少ない運動を習慣にする
有酸素運動は体重管理と血糖コントロールの両方に有効です。1日20〜30分程度のウォーキングから始めると、無理なく続けやすいかもしれません。運動前後にはしっかり水分を摂り、体調がすぐれない日は休むといった柔軟な姿勢も大切です。
腎臓を守るための日常生活チェックリスト
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 塩分摂取量 | 1日6g未満 |
| 水分摂取 | 主治医の指示量を目安にこまめに |
| 運動 | ウォーキング20〜30分/日 |
| 血圧管理 | 130/80mmHg未満を目標 |
| 定期検査 | 血液・尿検査を1〜3か月ごと |
マンジャロと他の薬を一緒に使うとき腎臓内科医が確認すること

腎疾患の治療では複数の薬を併用していることが多く、マンジャロを追加する際には飲み合わせの確認が欠かせません。腎臓内科医は血圧の薬やSGLT2阻害薬との組み合わせに注意を払いながら処方を検討します。
降圧薬(RAS阻害薬)との併用で気をつけたい脱水時の腎機能悪化
腎臓病の方はACE阻害薬やARBといった降圧薬を服用しているケースが多いでしょう。これらの薬は腎臓を保護する作用がある一方、脱水時には腎機能が一時的に悪化するリスクがあります。マンジャロの消化器症状で脱水になると、RAS阻害薬との相互作用で急性腎障害を起こす危険性が高まるため、水分管理が一層重要になります。
- 嘔吐や下痢が続いたらRAS阻害薬の一時休薬を検討
- 発熱時や猛暑日は脱水リスクが高まるため普段以上の水分補給を
- 急な体重減少(2〜3日で2kg以上)は脱水のサインとして受診を
SGLT2阻害薬とマンジャロの組み合わせで期待される相乗効果
SGLT2阻害薬は腎保護効果が確立された薬剤であり、マンジャロとの併用で体重減少と腎保護の両面でより高い効果が期待できるかもしれません。ただし、SGLT2阻害薬も尿量が増える薬ですので、マンジャロの消化器症状と重なった場合は脱水リスクが増す点に留意が必要です。
お薬手帳を活用して情報を一元管理する
複数の医療機関を受診している場合、お薬手帳にすべての処方情報をまとめておくと安心です。腎臓内科、糖尿病内科、かかりつけ医がそれぞれの処方を把握できるようにしておくことで、思わぬ飲み合わせのリスクを防ぐことができます。
マンジャロと併用される代表的な腎関連薬
| 薬剤カテゴリ | 代表例 | 併用時の注意 |
|---|---|---|
| RAS阻害薬 | エナラプリル、カンデサルタン | 脱水時の腎機能悪化に注意 |
| SGLT2阻害薬 | エンパグリフロジン、ダパグリフロジン | 尿量増加による脱水リスク |
| 利尿薬 | フロセミド、トリクロルメチアジド | 電解質異常・脱水に注意 |
よくある質問
- マンジャロは腎臓の機能にどのような影響を与えますか?
-
現在のところ、マンジャロが腎機能(eGFR)を悪化させるという報告はありません。むしろ、複数の臨床試験でアルブミン尿(UACR)の低下が確認されており、腎臓に対して保護的に働く可能性が示唆されています。
SURPASS-4試験の事後解析では、インスリングラルギンと比較してeGFRの低下速度が緩やかだったことも報告されました。ただし、長期的な腎保護効果を確定するにはさらなる研究が必要であり、主治医のもとで定期検査を続けることが大切です。
- マンジャロの消化器症状で脱水になった場合、腎臓に影響はありますか?
-
マンジャロの副作用として吐き気、下痢、嘔吐が起こることがあり、これらが重なると脱水を招く恐れがあります。脱水状態では腎臓への血流が低下し、急性腎障害を引き起こすリスクが高まります。
特に降圧薬(RAS阻害薬)や利尿薬を併用している方は、脱水による腎機能悪化のリスクがさらに上がるため注意が必要です。消化器症状がつらい場合は、こまめな水分補給を心がけ、早めに主治医へ相談してください。
- マンジャロは透析を受けている患者でも使用できますか?
-
薬物動態の研究により、透析が必要な末期腎不全の方でもマンジャロの血中濃度は健康な方と同程度であることが確認されています。そのため、透析中でも用量調整なしに使用できるとされています。
ただし、透析中の患者さんは全身状態が複雑であり、水分や電解質のバランスが崩れやすい状況にあります。マンジャロの使用を開始する際は、腎臓内科医と十分に相談したうえで慎重に進めることが望ましいでしょう。
- マンジャロとSGLT2阻害薬の併用は腎臓にとって安全ですか?
-
SGLT2阻害薬はそれ自体が腎保護効果を持つ薬剤であり、マンジャロとの併用は体重管理と腎保護の両面で相乗効果が期待できます。現時点で、両薬剤の併用による重大な腎障害を示すデータは報告されていません。
ただし、SGLT2阻害薬は尿量を増やす作用があるため、マンジャロの消化器症状と重なると脱水リスクが高まる場合があります。併用中は日ごろから十分な水分を摂取し、体重や尿量の変化に気を配ることが大切です。気になる症状があれば、遠慮なく主治医にお伝えください。
- マンジャロで体重を減らすと腎臓病の進行を抑えられますか?
-
肥満は腎臓病の発症・進行リスクを高める要因のひとつであり、体重を適切に減らすことで腎臓への負担を軽くできる可能性があります。マンジャロの臨床試験では、体重減少に伴いアルブミン尿が改善した結果が複数報告されました。
ただし、体重減少だけで腎臓病の進行を完全に止められるわけではありません。血圧や血糖のコントロール、食事療法、定期的な検査を組み合わせた総合的な管理が腎臓を守るうえで重要です。マンジャロはそのひとつの手段として、主治医と相談しながら活用していただければと思います。
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