マンジャロ(チルゼパチド)は体重減少だけでなく、腎臓を守る効果にも注目が集まっている薬剤です。肥満や2型糖尿病を抱える方にとって、慢性腎臓病(CKD)の進行を防ぐことは将来の健康を左右する大きなテーマでしょう。
この記事では、臨床試験で示されたマンジャロの腎保護に関するエビデンスを整理しながら、まだ解明されていない研究課題についてもわかりやすく解説します。腎臓への影響が気になる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
マンジャロが腎臓に与える影響は?肥満と腎臓病をつなぐ深い関係

マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、肥満や2型糖尿病の治療で用いられるGIP/GLP-1受容体作動薬です。体重減少や血糖コントロールだけでなく、腎臓への好影響を示唆するデータが臨床試験から報告されています。
肥満が腎臓に負担をかける仕組みとは
体重が増えすぎると、腎臓の糸球体(血液をろ過する部分)に過剰な負荷がかかります。高血圧や脂質異常、インスリン抵抗性なども加わり、腎臓のろ過機能が少しずつ低下していくのです。
肥満に伴う慢性的な炎症も、腎障害を進める一因とされています。つまり、体重管理と腎臓の健康は切り離せない関係にあるといえるでしょう。
GIP/GLP-1受容体作動薬であるマンジャロの特徴
マンジャロは、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の両方の受容体に作用する「デュアルアゴニスト」です。週1回の皮下注射で投与でき、従来のGLP-1受容体作動薬を上回る体重減少効果が確認されています。
マンジャロの主な作用と腎臓への影響
| 作用 | 腎臓への影響 | 補足 |
|---|---|---|
| 体重減少 | 糸球体への圧力を軽減 | 肥満関連腎症の改善に寄与 |
| 血糖改善 | 糖化による腎障害を抑制 | HbA1c低下で間接的に保護 |
| 血圧低下 | 腎血管の負荷を減らす | 収縮期血圧の有意な低下 |
| 抗炎症作用 | 腎臓の炎症を抑える | hsCRPの改善を確認 |
腎機能が低下していてもマンジャロは使えるのか
チルゼパチドの薬物動態試験では、軽度から重度の腎障害、さらに透析を要する末期腎不全の方でも、薬の血中濃度に大きな差がなかったと報告されています。そのため、腎機能の程度にかかわらず用量調整なしで処方できる可能性が示されました。
ただし、消化器症状(吐き気や下痢)による脱水が腎機能に影響する場合もあるため、水分補給や体調の変化への注意は欠かせません。
SURPASS-4試験で示されたマンジャロの腎保護データを読み解く

SURPASS-4試験のサブ解析では、マンジャロがインスリングラルギンと比較して腎臓関連の複合エンドポイントのリスクをおよそ4割低下させたことが報告されました。これは腎臓専門医からの関心を集めた画期的なデータです。
SURPASS-4試験の概要と対象者
SURPASS-4は、2型糖尿病で心血管リスクの高い患者約2,000名を対象に、マンジャロ(5mg・10mg・15mg)とインスリングラルギンを比較した第3相試験です。追跡期間の中央値は約85週間でした。
対象者のうち約17%はeGFR(推算糸球体ろ過量)60未満の中等度以上の腎障害を、約35%はアルブミン尿を合併していました。
アルブミン尿の減少とeGFR低下の抑制
インスリングラルギン群ではアルブミン尿が37%悪化したのに対し、マンジャロ群ではアルブミン尿の増悪がみられませんでした。eGFRの年間低下速度もマンジャロ群のほうが緩やかで、腎機能の維持に有利な結果を示しています。
特にアルブミン尿30mg/g以上のサブグループでは、腎複合エンドポイントのハザード比が0.47と顕著なリスク低減を認めています。
SGLT2阻害薬との併用でも腎保護効果は維持された
注目すべきは、SGLT2阻害薬をすでに服用している患者さんでも、マンジャロの腎保護効果が上乗せされた点です。既存の腎保護薬の効果を打ち消すことなく、さらなる恩恵が得られる可能性を示唆しています。
SURPASS-4の主な腎アウトカム
| 評価項目 | マンジャロ群 | インスリン群 |
|---|---|---|
| 腎複合エンドポイント(HR) | 0.59 | 1.00(基準) |
| 新規マクロアルブミン尿(HR) | 0.41 | 1.00(基準) |
| eGFR低下速度の群間差 | 年間約2.2mL/min/1.73m²有利 | 基準 |
マンジャロのアルブミン尿改善効果はSURPASS試験全体でも裏づけられている

SURPASS-1から5までの5つの臨床試験を統合した解析でも、マンジャロは用量依存的にアルブミン尿を改善し、その効果は比較薬(プラセボ・セマグルチド・インスリン)との比較いずれでも一貫していました。
5試験のプール解析で確認された用量反応性
5,299名のデータを統合した結果、マンジャロ15mg群は比較薬に対してアルブミン尿(UACR)を約26%減少させました。5mg群でも約19%、10mg群でも約22%の低減効果が認められ、用量が上がるほど効果が大きくなっています。
アルブミン尿30以上のサブグループで効果はさらに顕著
ベースラインのUACRが30mg/g以上の方では、マンジャロ15mg群のUACR低下幅が約47%に達しました。この規模のアルブミン尿改善は、長期的な腎機能維持に結びつくと過去のメタ解析で示されている閾値を超えています。
| マンジャロ用量 | 全体のUACR変化 | UACR≧30群の変化 |
|---|---|---|
| 5mg | −19.3% | −31.3% |
| 10mg | −22.0% | −42.2% |
| 15mg | −26.3% | −47.3% |
体重減少だけでは説明できない腎保護の仕組み
媒介分析の結果、アルブミン尿低下のおよそ半分はHbA1cと体重の改善で説明できましたが、残りの半分は別の経路によるものと推測されています。糸球体内皮のバリア機能改善や抗炎症作用など、マンジャロ固有の直接的な腎保護作用が想定されています。
肥満だけで糖尿病がない人にもマンジャロの腎保護効果は期待できるのか

糖尿病を合併していない肥満患者を対象としたSURMOUNT試験でも、マンジャロはアルブミン尿を有意に改善し、腎保護効果が糖尿病の有無を問わない可能性が報告されています。
SURMOUNT-1試験の結果から見えてきたこと
2型糖尿病のない肥満患者2,539名を対象としたSURMOUNT-1では、72週時点でマンジャロ群のUACRがプラセボ群に対して約8.4%改善しました。ベースラインのアルブミン尿が30mg/g以上のサブグループでは、改善幅が約42%に拡大しています。
2型糖尿病を合併した肥満患者のSURMOUNT-2ではさらに大きな改善
2型糖尿病を有する肥満患者938名が参加したSURMOUNT-2では、プラセボとの差が約31%に達しました。アルブミン尿30mg/g以上のグループでは約55%の低減が確認されており、糖尿病の有無を問わず腎臓への恩恵が期待できるでしょう。
シスタチンCで評価したeGFRでも有利な結果
体重が大きく減ると筋肉量も変化し、クレアチニンベースのeGFR値に影響することがあります。SURMOUNT-1ではシスタチンCベースのeGFRがプラセボより3.2mL/min/1.73m²高く、筋肉量の変化を差し引いても腎機能が保たれていたと判断できます。
SURMOUNT試験におけるマンジャロの腎関連データまとめ
- SURMOUNT-1(糖尿病なし):72週でUACR約8.4%改善(対プラセボ)
- SURMOUNT-2(糖尿病あり):72週でUACR約31.1%改善(対プラセボ)
- アルブミン尿30以上のサブグループでは改善幅がさらに拡大
セマグルチドのFLOW試験が示した腎アウトカムとマンジャロへの期待

同じインクレチン系薬であるセマグルチドは、FLOW試験で腎疾患の進行を24%抑制するという明確なエビデンスを示しました。この結果は、マンジャロにも同等以上の腎保護効果があるのではないかという期待を高めています。
FLOW試験の成果が示すGLP-1受容体作動薬の腎保護力
FLOW試験は、2型糖尿病と慢性腎臓病を合併した約3,500名を対象に、セマグルチド1.0mgとプラセボを比較した大規模ランダム化比較試験です。中間解析で明確な有効性が確認されたため、予定より早く試験が終了しました。
主要評価項目である腎疾患イベント(透析開始・eGFR50%低下・腎死亡・心血管死)はセマグルチド群で24%減少し、心血管死のリスクも29%低下しています。
マンジャロはセマグルチドを上回る腎保護を実現できるのか
マンジャロはGIP受容体とGLP-1受容体のデュアルアゴニストであり、体重減少やHbA1c改善の効果はセマグルチドを上回ります。リアルワールドデータの後ろ向き研究では、マンジャロ使用群の腎有害イベントがセマグルチド群より約48%少なかったという報告もあります。
ただし、これらは観察研究であり、バイアスの影響を排除できません。マンジャロ単独で腎臓をどの程度守れるかを証明するには、専用のランダム化比較試験が必要です。
マンジャロの腎保護に関する主な進行中試験
| 試験名 | 対象 | 主な評価項目 |
|---|---|---|
| TREASURE-CKD | CKD+過体重/肥満 | 腎酸素化(BOLD MRI) |
| SURPASS-CVOT | 2型糖尿病+心血管リスク | MACE(副次:腎) |
| SURMOUNT-MMO | 肥満(糖尿病なし) | 心血管イベント |
TREASURE-CKD試験やSURPASS-CVOTなど進行中の臨床試験
現在、マンジャロの腎保護効果を直接検証するTREASURE-CKD試験(NCT05536804)が進行中です。CKDを有する過体重・肥満の方を対象に、腎臓の酸素化をMRIで評価する第2相試験となっています。
さらに、心血管アウトカム試験であるSURPASS-CVOTでは、副次評価項目にアルブミン尿や腎疾患の新規発症・悪化が含まれており、大規模な前向きデータが数年以内に得られる見通しです。
マンジャロの腎保護が注目されるなか、現時点で残されている研究上の課題

マンジャロの腎保護データはすべてサブ解析や後ろ向き研究から得られたものであり、腎アウトカムを主要評価項目とした大規模前向き試験はまだ完了していません。今後の研究で解明すべき課題は複数あります。
ランダム化比較試験による「腎臓を第一目標」としたエビデンスが必要な理由
SURPASS-4やSURMOUNT試験は、本来は血糖コントロールや体重減少を主目的とした試験であり、腎アウトカムは副次的に評価されたにすぎません。腎臓病の進行抑制を主要目標とした専用の試験を実施し、結果を確認することが求められています。
長期的な腎保護効果の持続性を確認するデータが足りない
現在得られているデータの追跡期間は2年前後です。CKDは数十年にわたって進行する病気であるため、マンジャロの腎保護効果が5年、10年と持続するのかどうか、長期フォローアップのデータが待たれます。
SGLT2阻害薬やフィネレノンとの併用効果の解明も急がれる
現在のCKD治療では、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、フィネレノン(非ステロイド性ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬)が主要な柱です。マンジャロをこれらと組み合わせたときの上乗せ効果や安全性を体系的に評価する研究が求められています。
今後解明が待たれるマンジャロの腎保護に関する課題
- 腎アウトカムを主要評価項目とした前向きRCTの実施
- 5年以上の長期追跡データの収集
- CKDステージ別の効果検証(軽度〜重度)
- 非糖尿病性CKD患者でのエビデンスの蓄積
よくある質問
- マンジャロ(チルゼパチド)には腎臓を保護する効果があるのですか?
-
SURPASS-4試験のサブ解析では、マンジャロがインスリングラルギンと比較してアルブミン尿の改善やeGFR低下速度の抑制を示しました。腎複合エンドポイントのリスクも約41%低減しています。
ただし、これらはすべて事後解析の結果であり、腎臓を主目的とした前向き試験で確認されたものではありません。今後のTREASURE-CKD試験やSURPASS-CVOTの結果を待つ必要があります。
- マンジャロの腎保護効果は糖尿病がなくても期待できますか?
-
SURMOUNT-1試験では、2型糖尿病を伴わない肥満患者でもマンジャロ群のアルブミン尿がプラセボ群に比べて改善しました。特にベースラインのアルブミン尿が高い方では約42%の改善が報告されています。
糖尿病の有無を問わず腎臓への好影響が示唆されていますが、長期的な腎アウトカムへの影響はまだ確定していません。主治医と相談のうえで判断することが大切です。
- マンジャロは腎機能が低下している人でも安全に使えますか?
-
チルゼパチドの薬物動態試験によると、軽度から重度の腎障害および透析を必要とする末期腎不全の方でも、薬の血中濃度に臨床上問題となる差はみられませんでした。原則として用量調整は不要とされています。
ただし、消化器症状(吐き気・下痢など)による脱水が急性腎障害を起こすリスクがゼロではありません。服用中は十分な水分摂取を心がけ、体調に変化があれば早めに医師へ相談してください。
- マンジャロとセマグルチドでは腎臓への効果に違いがありますか?
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セマグルチドはFLOW試験において腎疾患イベントを24%抑制するという、腎アウトカムを主要評価項目とした大規模試験のエビデンスを持っています。マンジャロには同様の専用試験結果がまだありません。
一方、リアルワールドデータではマンジャロの腎有害イベント発生率がセマグルチドより低いという報告があります。両剤の直接比較試験は存在しないため、現時点で優劣を断定することはできません。
- マンジャロの腎保護に関する研究は今後どのように進む予定ですか?
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現在進行中のTREASURE-CKD試験では、CKDを有する過体重・肥満患者を対象にマンジャロの腎臓酸素化への影響を調べています。加えて、心血管アウトカム試験であるSURPASS-CVOTでは副次評価項目として腎疾患の進行が評価される予定です。
これらの試験結果が出そろえば、マンジャロの腎保護効果がより明確になるでしょう。CKD管理における新たな治療選択肢として確立されるかどうか、今後数年間の研究動向が鍵を握っています。
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