透析治療を受けている方が体重管理に悩んだとき、マンジャロ(チルゼパチド)という選択肢が気になる方も多いでしょう。透析患者にとって体重の増減はドライウェイトの見直しに直結し、日々の透析効率や血圧管理にまで影響を及ぼします。
この記事では、マンジャロが透析中の体重やドライウェイト設定にどのような変化をもたらすのか、肥満治療の専門的な視点から丁寧に解説していきます。主治医と相談するときの手がかりとして、ぜひお役立てください。
透析中にマンジャロで体重を落とすと、ドライウェイトはどう変わるのか

マンジャロ(チルゼパチド)を使って体重が減ると、透析で目標とするドライウェイトも一緒に見直す必要があります。ドライウェイトとは、透析後に余分な水分を取り除いた「その人にとっての適正体重」のことで、この数値がずれると透析のたびに血圧低下やけいれんを起こしやすくなります。
ドライウェイトとは透析患者の命綱ともいえる数値
ドライウェイトは、透析後に体内の余計な水分がほぼ抜けた状態での体重を指します。適正な値を維持できれば血圧が安定し、心臓への負担が軽くなるでしょう。
反対に、ドライウェイトが実際の体組成と合わなくなると、低血圧やこむら返りといった透析中のトラブルが増えるかもしれません。医療スタッフが毎回の透析で注意深く確認するのは、そうした理由があるからです。
マンジャロによる体脂肪の減少がドライウェイト調整のきっかけになる
マンジャロはGIP受容体とGLP-1受容体の両方に働きかける注射薬で、食欲を自然に抑えながら体脂肪を減らす作用が期待されています。血液透析を受けている2型糖尿病の患者さんを対象にした研究では、マンジャロ投与後にドライウェイトが約1.0kg減少したと報告されました。
| 項目 | 投与前 | 投与後 |
|---|---|---|
| ドライウェイト変化 | 基準値 | 約-1.0kg |
| BMI変化 | 基準値 | 約-0.6kg/m² |
| 骨格筋量 | 基準値 | 有意な低下なし |
筋肉を減らさず脂肪だけを落とせる点が透析患者に合っている
透析患者にとって筋肉量の低下はフレイル(虚弱)のリスクを高める深刻な問題です。マンジャロは脂肪量を優先的に減らし、骨格筋量には大きな影響を与えなかったという報告があり、筋肉を維持しながらドライウェイトを下方修正できる可能性が示されています。
ただし、個人差がありますので、体組成分析(生体インピーダンス法など)を併用しながら慎重にモニタリングすることが大切です。
マンジャロの有効成分チルゼパチドは腎機能が低下していても使えるのか

チルゼパチドは軽度から末期腎不全の患者まで、腎機能のレベルによる用量調節は不要とされています。透析を受けている方でも血中濃度に臨床上問題となるほどの変動がなかったことが、薬物動態試験で確認されました。
薬物動態試験が示した透析患者への安全性データ
45名の被験者を対象にした臨床薬理試験では、腎機能の程度(軽度・中等度・重度・末期腎不全)にかかわらず、チルゼパチドの体内での動きに大きな差は見られませんでした。末期腎不全で血液透析を受けている方にもチルゼパチド5mgが投与され、忍容性も良好だったと報告されています。
透析の前後で薬の血中濃度は変化しにくい
チルゼパチドは分子量が大きく、血液透析によって除去されにくい性質を持っています。そのため透析のスケジュールに合わせた特別な投与タイミングの調整は、原則として必要ありません。
週1回の皮下注射という投与方法も、透析日に合わせた生活リズムを崩さずに続けやすいでしょう。
GIP/GLP-1受容体デュアルアゴニストとしての特徴
マンジャロはGIPとGLP-1の両方の受容体に同時に作用する世界初のデュアルアゴニスト(二重作動薬)です。GLP-1受容体だけに働きかける従来の薬と比べて、血糖値の改善と体重減少の両方でより大きな効果が期待されています。
透析患者は使える糖尿病治療薬が限られるため、新たな選択肢として注目が集まっています。
| 比較項目 | マンジャロ | 従来のGLP-1受容体作動薬 |
|---|---|---|
| 作用する受容体 | GIPとGLP-1の両方 | GLP-1のみ |
| 投与頻度 | 週1回皮下注射 | 週1回または毎日 |
| 体重減少効果 | 比較的大きい | 中等度 |
透析患者がマンジャロを使うときに血糖コントロールはどこまで改善するか

マンジャロを使用した血液透析患者では、グリコアルブミン値(GA値)が有意に低下したと報告されています。透析患者はHbA1cの精度が低くなるため、GA値や持続血糖モニター(CGM)による評価がより正確な指標になります。
透析患者ではHbA1cよりグリコアルブミンが信頼できる
透析を受けている方は赤血球の寿命が短くなるため、一般的な糖尿病の指標であるHbA1cが実際よりも低く出る傾向があります。そのため、GA値のほうが2〜3週間の血糖状態をより正確に反映してくれます。
マンジャロを投与した研究では、GA値が22.7%から18.3%へと統計的に有意な改善を示しました。これは血糖管理が順調に進んでいることの裏づけといえるでしょう。
インスリンから切り替えられるケースもある
透析患者の中には、マンジャロへの切り替え後にインスリン注射を中止できた例も報告されています。インスリンは体重増加を招きやすく、透析中の血糖変動を助長することもあるため、インスリンに代わる選択肢が生まれることは大きなメリットです。
- 研究対象9名中3名がインスリンを中止
- 低血糖の増加は認められなかった
- 吐き気を除き重篤な副作用なし
血糖値が安定すると透析中の低血糖リスクも和らぐ
透析中は血液中のブドウ糖が透析液へ移行するため、無自覚の低血糖が起こりやすくなります。マンジャロは血糖依存的にインスリンを分泌させる仕組みなので、単独使用で重い低血糖を起こしにくいと考えられています。
血糖の上下幅が小さくなれば、透析中の不快な症状が減り、日常の活動量も維持しやすくなるでしょう。
マンジャロは腎臓を守る効果も期待されている

大規模臨床試験のSURPASS-4では、チルゼパチドを投与された2型糖尿病の高心血管リスク患者で、腎機能低下の進行が抑えられ、アルブミン尿が減少したと報告されました。腎保護効果はGLP-1受容体作動薬の共通した特徴ですが、マンジャロではGIP受容体を介した追加的な作用も示唆されています。
SURPASS-4試験で腎アウトカムが改善した
SURPASS-4試験は、心血管リスクの高い2型糖尿病患者約2,000名を対象にした大規模な第3相試験です。チルゼパチド群ではインスリングラルギン群と比較して、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下速度が緩やかになり、腎複合エンドポイントの発生リスクが41%低下しました。
特にアルブミン尿が30mg/g以上の患者やeGFRが60mL/min/1.73m²未満の患者といった、すでに腎機能が下がり始めている層でも同様の傾向が確認されています。
アルブミン尿の減少が腎臓へのダメージ軽減を示す
アルブミン尿は腎臓の血管が傷ついているサインであり、全身の炎症とも関連します。マンジャロによる体重減少と血糖改善が相まって、腎臓への負担が軽くなったと考えられています。
肥満そのものが腎臓に炎症を引き起こす原因のひとつです。体重が減ればその炎症も抑えられるので、腎保護はマンジャロの体重減少作用と切り離せない効果でしょう。
透析導入前の段階で使うことが期待される
現時点では、まだ透析に至っていない慢性腎臓病(CKD)の段階でマンジャロを使うことで、透析導入を遅らせられる可能性が議論されています。SURMOUNT-1やSURMOUNT-2といった肥満治療の大規模試験でも、腎機能パラメーターの改善が確認されました。
透析を始める前の体重管理として早めに取り入れることで、腎機能の維持につながるかもしれません。ただし、現在進行中の追加研究の結果を待つ必要があります。
SURPASS-4試験における腎アウトカムの比較
| 評価指標 | チルゼパチド群 | インスリン群 |
|---|---|---|
| 腎複合エンドポイント | リスク41%低下 | 基準 |
| eGFR低下速度 | 年間約2.2mL/min差で緩やか | 基準 |
| 新規マクロアルブミン尿 | リスク59%低下 | 基準 |
透析患者がマンジャロを使うときに注意すべき副作用と安全対策

マンジャロの主な副作用は吐き気や食欲低下といった消化器症状で、透析患者でも同様の傾向が報告されています。透析中は栄養状態の維持が欠かせないため、体重が減りすぎないよう定期的なモニタリングが重要です。
消化器症状は低用量から始めることで和らげられる
マンジャロの添付文書では、2.5mgから開始して4週間以上の間隔で段階的に増量する方法が推奨されています。透析患者を対象にした研究でも平均投与量は4.7mg/週程度であり、高用量まで増やさなくても一定の効果が得られたとされています。
吐き気は投与初期に起こりやすく、多くの場合は数週間で軽減します。万が一続くようであれば、主治医に相談して用量を調整してもらいましょう。
透析中の食事量低下と栄養不良のリスクに目を配る
食欲が抑えられるマンジャロの作用は体重管理に有利ですが、もともと食事制限が厳しい透析患者にとっては栄養摂取量の過度な減少につながる恐れもあります。血清アルブミン値やタンパク質摂取量を定期的に測り、筋肉量の低下が起きていないか確認することが大切です。
| チェック項目 | 目安の頻度 | 注意点 |
|---|---|---|
| 血清アルブミン | 月1回 | 3.5g/dL未満で要注意 |
| 体組成分析 | 1〜3か月ごと | 骨格筋量の変化を確認 |
| 食事記録 | 随時 | タンパク質摂取量を把握 |
主治医・透析スタッフ・管理栄養士のチーム体制で安全を守る
マンジャロを透析中に使う場合は、腎臓内科医・透析スタッフ・管理栄養士が連携して経過を見ていくことが望ましいでしょう。ドライウェイトの変更判断はもちろん、栄養指導や副作用のフォローアップまで多職種で対応するほうが安全です。
自己判断で用量を増減したり中断したりすることは避け、気になる症状があれば早めに担当医へ伝えてください。
透析患者の体重が変わったらドライウェイトをどのタイミングで見直すべきか

マンジャロを開始した後は、体重の減少に合わせてドライウェイトをこまめに調整する必要があります。目安としては、1〜2週間ごとの透析前後の血圧変動や自覚症状を手がかりに、0.2〜0.5kgずつ慎重に下げていくのが一般的です。
生体インピーダンス法(BIA)で体内の水分量と脂肪量を分けて評価する
体重が減ったとき、「水分が減ったのか脂肪が減ったのか」を区別することが透析管理では非常に大切です。生体インピーダンス法(BIA)は電気抵抗を利用して体水分量・脂肪量・筋肉量をそれぞれ数値化でき、ドライウェイトの適正判断に役立ちます。
透析中の血圧低下やけいれんはドライウェイトのずれを示すサイン
ドライウェイトが実際の体重より高く設定されたままだと、除水量が過剰になり透析中に急激な血圧低下が起きやすくなります。逆に低すぎると水分が体にたまり、むくみや息切れの原因になるでしょう。
マンジャロで少しずつ体重が落ちてきた場合、数週間ごとに少量ずつドライウェイトを引き下げることが安全な方法です。急な変更は低血圧を招く恐れがあるため、焦らず段階的に調整していきましょう。
体重減少が止まったタイミングでドライウェイトを再評価する
マンジャロの減量効果は開始後数か月で緩やかになっていく傾向があります。体重が安定してきたら、改めてBIAや血液検査のデータをもとにドライウェイトが適正かどうかを総合的に判断します。
食事内容の変化や運動量の増減によっても体組成は変わるため、定期的な再評価を続けることが長期的な健康管理につながります。
BIAで確認すべき体組成のポイント
- 細胞外液量(ECW)の割合が過剰なら体液貯留を疑う
- 脂肪量のみが減少している場合はドライウェイトを下方修正
- 筋肉量が低下していれば栄養状態の見直しを優先
透析と肥満を同時に抱えたときに主治医に相談したい3つのポイント

透析患者が肥満を改善したいと考えたとき、マンジャロの使用について主治医と具体的に話し合うことが第一歩です。以下の3つのポイントを押さえておけば、診察の場でスムーズに相談を進められるでしょう。
「自分の腎機能と体組成に合った減量目標」を主治医と決める
透析患者の減量は、一般的なダイエットとは異なります。筋肉量を減らさず脂肪だけを落とすことが求められるため、BMIだけでなく体脂肪率や骨格筋量を含めた目標設定が欠かせません。
主治医に「どのくらいのペースで、どこまで体重を落とすのが安全か」と具体的に質問してみてください。個々の状態に合わせた現実的な目標をもらえるはずです。
主治医に確認したい相談内容の整理
| 相談ポイント | 確認内容 | 得られる情報 |
|---|---|---|
| 減量目標 | 体脂肪率・筋肉量を含む個別目標 | 安全な減量ペース |
| 薬の相互作用 | 現在の処方薬すべてとの併用可否 | 用量調整の必要性 |
| モニタリング計画 | 体組成評価や血液検査の頻度 | 通院スケジュール |
「現在使っている薬との飲み合わせ」を確認する
マンジャロは胃の排出を遅らせる作用があるため、一部の経口薬の吸収に影響を与える可能性があります。透析患者は多くの薬を服用しているケースが多いので、すべての薬を主治医や薬剤師に伝えた上で安全性を確認してもらうことが大切です。
特にインスリンやスルホニル尿素薬を併用している場合は、低血糖のリスクが上がる可能性もあるため、用量の見直しが必要になるかもしれません。
「副作用が出たときの対処法」をあらかじめ聞いておく
吐き気が出たら食事はどうすればいいか、どの程度なら受診すべきかなど、副作用への対応策を事前に確認しておけば安心感が大きく違います。気になることは遠慮なく主治医に伝えましょう。
治療は医師任せにするのではなく、自分自身も積極的に情報を得て「一緒に管理していく」という姿勢が、結果的に体重管理の成功率を高めてくれます。
よくある質問
- マンジャロは透析を受けていても安全に使用できますか?
-
チルゼパチドの薬物動態試験では、末期腎不全で血液透析を受けている方でも薬の血中濃度に大きな影響は認められず、用量調節は原則として不要とされました。消化器症状(吐き気など)は腎機能が正常な方と同程度に報告されており、低用量から開始して様子を見ながら増量する方法が推奨されています。
ただし、透析患者への使用に関する大規模な長期試験はまだ限られているため、必ず主治医と相談した上で使用を判断してください。栄養状態のモニタリングを併せて行うことが安全な使用のカギとなります。
- マンジャロで体重が減ったとき、ドライウェイトはすぐに変更するべきですか?
-
体重が減り始めたからといって、すぐにドライウェイトを大幅に変更することは推奨されません。一般的には0.2〜0.5kgずつ段階的に引き下げながら、透析中の血圧変動やけいれんの有無を観察していきます。
生体インピーダンス法などで体組成を評価し、脂肪が減ったのか水分が減ったのかを見極めた上で判断することが安全です。急な変更は透析中の血圧低下を招く恐れがあるため、主治医の指示に従って慎重に進めましょう。
- マンジャロを使っている透析患者が食欲低下で栄養不足になる心配はありませんか?
-
マンジャロには食欲を抑える作用があるため、もともと食事制限を受けている透析患者では摂取量が減りすぎる恐れがあります。血清アルブミン値を月1回程度チェックし、3.5g/dL未満に下がっていないか確認することが大切です。
管理栄養士の指導を受けながら、タンパク質やエネルギーの必要量を確保できる食事内容を整えていくことで、栄養不良のリスクを抑えられます。体組成分析も定期的に実施してもらいましょう。
- マンジャロは透析を始める前のCKD患者にも腎保護効果がありますか?
-
SURPASS-4試験の事後解析では、2型糖尿病で心血管リスクが高い患者にチルゼパチドを投与した結果、eGFRの低下速度が緩やかになり、アルブミン尿が減少しました。また、SURMOUNT-1やSURMOUNT-2の試験でも腎機能パラメーターの改善傾向が確認されています。
腎臓への保護効果が示唆されているものの、腎アウトカムを主要評価項目とした専用の大規模試験はまだ完了していません。透析導入前のCKD患者に対する長期的な腎保護効果を証明するには、今後の研究結果を待つ段階です。
- マンジャロの投与は透析日と非透析日のどちらに行うべきですか?
-
チルゼパチドは分子量が大きいため透析で除去されにくく、投与日を透析日に合わせる必要は原則ありません。週1回の皮下注射なので、曜日を決めて同じタイミングで打ち続けることが推奨されています。
実際の研究でも、透析のスケジュールに関係なくチルゼパチドの血中濃度は安定していたと報告されています。ご自身のライフスタイルに合った曜日を主治医と相談して決めれば問題ないでしょう。
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