マンジャロで血圧はどのくらい下がる?SURPASS試験の血圧データ分析

マンジャロで血圧はどのくらい下がる?SURPASS試験の血圧データ分析

マンジャロ(チルゼパチド)は体重を減らすだけでなく、血圧にも良い影響を与える可能性が臨床試験で示されています。SURPASS試験では、収縮期血圧が最大で約12.6mmHg低下したというデータが報告されました。

血圧の改善は体重減少による影響が大きいものの、体重とは独立した降圧効果も一部確認されています。この記事では、SURPASS-1から5までの試験データをもとに、マンジャロがどの程度血圧を下げるのかを詳しく解説します。

肥満と高血圧の両方に悩む方にとって、治療の選択肢を考えるうえで参考になる情報をお届けします。

目次

マンジャロ(チルゼパチド)はなぜ血圧を下げるのか|GIP/GLP-1受容体作動薬の降圧効果

マンジャロによる血圧低下は、主に体重減少を介した間接的な効果と、体重に依存しない直接的な効果の2つが組み合わさって生じます。SURPASS試験のデータを分析した研究では、収縮期血圧低下の約半分以上が体重減少に関連していたと報告されています。

マンジャロが持つ2つの降圧ルート

マンジャロはGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の2つの受容体に同時に作用する薬剤です。この二重の作用が、従来のGLP-1受容体作動薬よりも大きな体重減少をもたらします。

体重が減ると血管にかかる負担が軽くなり、インスリン抵抗性も改善されます。その結果として血圧が下がりやすくなるわけです。

体重とは関係なく血圧が下がる仕組みとは

SURPASS-4試験(心血管リスクの高い2型糖尿病患者を対象とした試験)では、体重減少では説明できない降圧効果が33〜57%を占めていました。GLP-1受容体作動薬には、腎臓でのナトリウム排泄を促す作用や、血管内皮機能を改善する作用があるとされています。

降圧の経路主な仕組み寄与の程度
体重減少依存脂肪量の減少による血管負担軽減約50〜70%
体重減少非依存ナトリウム排泄促進・血管機能改善約30〜50%

肥満と高血圧を同時に抱える方にとっての意義

肥満と高血圧は互いに影響し合う関係にあり、体重が増えるほど血圧も上がりやすくなります。マンジャロは血糖コントロールと体重管理を同時に行えるだけでなく、血圧にもプラスに働く可能性があるため、複数のリスク因子を持つ方にとって注目すべき薬剤といえるでしょう。

SURPASS-1から5の血圧データを一覧で比較する|マンジャロの収縮期血圧変化量

SURPASS-1から5の5つの臨床試験すべてで、マンジャロは収縮期血圧を低下させました。用量が高いほど降圧効果が大きくなる傾向が認められ、15mg投与群では比較対照群に対して最大約11.5mmHgの差が生じています。

SURPASS-1(プラセボ対照)の血圧結果

SURPASS-1は食事・運動療法のみで血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者478名を対象とした40週間の試験です。マンジャロ単剤療法とプラセボを比較しました。

この試験では、マンジャロ5mg群で収縮期血圧がプラセボに対して約5.4mmHg、15mg群では約7.2mmHg低下しています。注目すべき点は、参加者のベースラインの血圧が比較的正常範囲だったにもかかわらず、一定の降圧効果が認められたことです。

SURPASS-2(セマグルチド対照)の血圧結果

SURPASS-2はセマグルチド(同じくGLP-1受容体作動薬の一種)1mgと比較した1879名規模の試験です。マンジャロ15mg群ではセマグルチドに対しても収縮期血圧がさらに低下しており、体重減少量の差がこの結果に大きく影響したと考えられています。

試験名比較対照15mg群のSBP差
SURPASS-1プラセボ約-7.2 mmHg
SURPASS-2セマグルチド1mg約-3.8 mmHg
SURPASS-3インスリンデグルデク約-7.4 mmHg
SURPASS-4インスリングラルギン約-11.5 mmHg
SURPASS-5プラセボ+基礎インスリン約-8.7 mmHg

SURPASS-4で心血管リスクの高い患者に見られた降圧効果

SURPASS-4は心血管疾患や心血管リスクの高い2型糖尿病患者2002名を対象としており、SURPASS試験の中で規模が大きく期間も長い試験です。インスリングラルギンとの比較において、マンジャロ15mgは収縮期血圧を約11.5mmHg多く低下させました。

心血管リスクが高い集団でこれだけの降圧効果が見られた点は、臨床的にも大きな意味を持っています。

SURPASS-5でインスリン併用中でも確認された血圧改善

SURPASS-5は、すでに基礎インスリン療法を受けている患者にマンジャロを上乗せした試験です。インスリン使用中という条件下でもマンジャロは血圧を有意に下げており、既存のインスリン治療を妨げないことが示されました。

マンジャロの用量別に見る血圧の変化量|5mg・10mg・15mgの比較

マンジャロの降圧効果には明確な用量依存性があります。5mg、10mg、15mgと投与量が増えるにつれて、収縮期血圧の低下幅は段階的に大きくなりました。メタアナリシスの結果では、5mgで約4.2mmHg、10mgで約5.3mmHg、15mgで約5.8mmHgの収縮期血圧低下が報告されています。

5mg投与群の血圧低下はどの程度だったか

5mg群はマンジャロの中で最も低い用量ですが、プラセボと比較して統計的に有意な血圧低下を示しました。SURPASS-1から5のプール解析では、5mg群と対照群の収縮期血圧の差は約1.3〜5.1mmHgの範囲でした。

この程度の低下でも、集団レベルでは心血管イベントの発生リスクを下げる可能性があります。わずかな血圧改善であっても、長期的に見れば健康上の恩恵は決して小さくありません。

10mg・15mg投与群ではさらに大きな降圧が見られた

10mg群では対照群との差が約1.7〜6.5mmHg、15mg群では約3.1〜11.5mmHgに達しました。特に15mg群の降圧効果は、一部の軽度降圧薬に匹敵する水準です。

  • 5mg群:収縮期血圧 約-4.2 mmHg(メタアナリシス中央値)
  • 10mg群:収縮期血圧 約-5.3 mmHg(メタアナリシス中央値)
  • 15mg群:収縮期血圧 約-5.8 mmHg(メタアナリシス中央値)

用量と体重減少の関係が血圧に与えた影響

マンジャロの用量が高くなるほど体重減少も大きくなり、SURPASS試験全体で6.6%から13.9%の体重減少が報告されています。体重と血圧の変化には統計的に有意な相関(r=0.18〜0.22)がありましたが、相関の強さ自体は弱いものでした。

つまり、体重が大きく減った人ほど血圧も下がる傾向はあるものの、体重変化だけでは血圧の動きを完全には説明できないということです。体重以外の要因も降圧に寄与している裏付けといえるでしょう。

ベースラインの血圧値が高いほどマンジャロの降圧効果は大きくなる

マンジャロによる血圧低下の幅は、治療開始前の血圧が高い人ほど顕著でした。SURPASS-1から5のプール解析では、ベースラインの収縮期血圧が140mmHgを超えていた患者群で最大の降圧効果が確認されています。一方、もともと血圧が正常範囲の方では、さらに血圧が下がることはほとんどありませんでした。

治療開始前の血圧別に見た降圧の程度

SURPASS試験のデータをベースラインの収縮期血圧で4つのグループに分けた解析では、第1四分位(122mmHg未満)の患者群ではマンジャロ投与後もほとんど血圧の変化がありませんでした。一方、第4四分位(140mmHg超)では、対照群と比べて大幅な低下が認められています。

この結果は、血圧が正常な方がマンジャロを使っても低血圧になるリスクは低いことを示唆しています。降圧薬を服用中の方にとっても安心できるデータです。

降圧薬を服用中でもマンジャロの効果は変わらなかった

SURPASS試験の参加者の中には降圧薬を使用している方も含まれていました。プール解析の結果、降圧薬の使用の有無によるマンジャロの血圧低下効果に有意な差はなく(交互作用のp値=0.77)、降圧薬の併用中でもマンジャロは同程度の効果を発揮しました。

ベースラインSBP区分降圧の傾向
122 mmHg未満ほとんど変化なし
122〜130 mmHg軽度の低下
130〜140 mmHg中等度の低下
140 mmHg超大幅な低下

低血圧の副作用は少なかったが注意は必要

マンジャロの投与によって低血圧に関連する有害事象の頻度は低いものでしたが、プラセボ群よりはやや高い傾向にありました。特にもともと血圧が低めの方や降圧薬を複数服用している方は、治療の経過中に血圧の推移を定期的に確認することが大切です。

マンジャロの血圧効果を支えるエビデンス|メタアナリシスで見えてきた全体像

個々のSURPASS試験だけでなく、複数の臨床試験を統合して分析したメタアナリシスでも、マンジャロの降圧効果は確認されています。7つの無作為化比較試験を統合した解析では、すべての用量で有意な収縮期・拡張期血圧の低下が認められました。

メタアナリシスが示したマンジャロの降圧効果の一貫性

Kanbayらの研究グループは7つの無作為化比較試験を対象にメタアナリシスを行いました。その結果、マンジャロ5mgで収縮期血圧が中央値で約4.2mmHg、10mgで約5.3mmHg、15mgで約5.8mmHg低下したと報告しています。

拡張期血圧についても同様に有意な低下が確認されており、脂質プロファイル(総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪)の改善も同時に認められました。血圧だけでなく脂質も改善するというデータは、心血管リスクの管理を考えるうえで心強い材料です。

SURMOUNT-1試験の血圧解析からわかったこと

SURMOUNT-1は肥満・過体重の非糖尿病患者を対象にマンジャロの効果を調べた大規模試験です。この試験の事後解析では、72週間の投与でプラセボ群と比較して収縮期血圧が6.8mmHg、拡張期血圧が4.2mmHg低下しました。

72週時点でマンジャロ投与群の58.0%が正常血圧に到達したのに対し、プラセボ群では35.2%にとどまりました。この差は臨床的に見ても意味のある数値です。

評価項目マンジャロ群プラセボ群
SBP低下幅-6.8 mmHg基準
DBP低下幅-4.2 mmHg基準
正常血圧到達率58.0%35.2%

体重減少が降圧効果の約7割を説明した

SURMOUNT-1の媒介分析(どの要因がどの程度結果に寄与したかを調べる分析手法)では、収縮期血圧低下の約68%、拡張期血圧低下の約71%が体重減少によって説明されました。残りの約30%は体重とは別の経路で生じた降圧効果と考えられています。

マンジャロで血圧が下がるまでの期間と持続性を確認する

マンジャロの降圧効果は投与開始後の早い段階から現れ、その後安定した状態が継続します。SURMOUNT-1試験では、投与開始から24週間で急速に血圧が低下し、その後72週時点まで効果が維持されたと報告されました。

投与24週目までに血圧は大きく低下した

SURMOUNT-1のデータでは、マンジャロ投与群において投与開始から24週間で収縮期・拡張期ともに血圧の急速な低下が見られました。この時期はマンジャロの用量を段階的に増やしていく期間と重なっており、用量の増加に伴って血圧も段階的に下がっていったと考えられます。

24週目以降は血圧が安定した状態で推移した

24週目以降、血圧はそれ以上の大きな変動を見せず、72週時点まで安定した水準を維持しました。急激に上がったり下がったりすることなく、穏やかな推移を示した点は治療の安全性を考えるうえでも好ましい特徴です。

  • 投与初期(0〜24週):血圧の急速な低下期
  • 維持期(24〜72週):血圧が安定した水準で推移
  • 低血圧関連の副作用:頻度は低いものの注意が必要

24時間血圧モニタリングでも確認された降圧効果

SURMOUNT-1の一部の参加者を対象にした24時間自由行動下血圧測定(ABPM)のサブスタディでは、マンジャロは昼間だけでなく夜間の血圧も低下させることが示されました。プラセボとの差は、10mg群で24時間収縮期血圧が約10.6mmHg低下するなど、臨床的に意味のある水準でした。

夜間の血圧が高い状態は心血管リスクを高めることが知られています。マンジャロが夜間血圧にも効果を示したという結果は、肥満と高血圧を併せ持つ患者にとって注目に値するデータです。

マンジャロの降圧効果を活かすために知っておきたい生活習慣のポイント

マンジャロは血圧を改善する効果が期待できますが、薬だけに頼るのではなく、日常の生活習慣を見直すことで効果をさらに高められます。食事、運動、睡眠の3つの柱を意識しながら治療を続けることが大切です。

減塩と食事の見直しが降圧効果をさらに引き出す

マンジャロで体重が減ると血圧は下がりやすくなりますが、塩分の過剰摂取が続いていると降圧効果が十分に発揮されない可能性があります。日本高血圧学会のガイドラインでは1日の食塩摂取量を6g未満にすることが推奨されています。

野菜や果物に含まれるカリウムには余分なナトリウムの排泄を助ける働きがあるため、バランスの取れた食事を心がけましょう。加工食品や外食が多い方は、知らないうちに塩分を摂り過ぎていることもあるため、食品の栄養成分表示を確認する習慣をつけると安心です。

生活習慣ポイント期待される効果
食事減塩・野菜中心の食事降圧効果の増強
運動有酸素運動30分/日血管機能の改善
睡眠7〜8時間の質の良い睡眠夜間血圧の安定

適度な有酸素運動は血管の健康を守る

ウォーキングや水泳などの有酸素運動を1日30分程度、週に5日以上行うことが血圧管理に効果的です。運動によって血管の内皮機能が改善され、血圧が下がりやすくなります。

マンジャロの治療中は消化器症状(吐き気や下痢など)が出ることもあるため、体調に合わせて運動強度を調整してください。無理のない範囲で習慣化することが長続きのコツでしょう。

主治医との連携で血圧管理の質を高める

マンジャロの投与中は定期的な血圧測定が大切です。家庭用血圧計を活用し、朝晩の血圧を記録して受診時に主治医に見せることで、治療方針の判断に役立ちます。

降圧薬をすでに服用している場合、マンジャロの併用によって血圧が下がりすぎることも考えられます。自己判断で降圧薬の量を変えたり中止したりせず、必ず主治医と相談しながら治療を進めてください。

よくある質問

マンジャロの血圧低下効果はどのくらいの期間で実感できますか?

SURMOUNT-1試験のデータによると、マンジャロの投与を始めてから約24週間(およそ6か月)で血圧の低下が顕著に見られました。その後72週時点まで効果は安定して持続しています。

ただし、効果の実感には個人差がありますので、投与開始から数週間で変化を感じる方もいれば、もう少し時間がかかる方もいらっしゃいます。定期的に血圧を測定し、主治医と一緒に経過を確認していくことが大切です。

マンジャロを使うと血圧が下がりすぎる心配はありますか?

SURPASS試験では、低血圧に関連する有害事象の頻度は全体的に低いものでした。ベースラインの血圧が正常範囲(収縮期122mmHg未満)の方では、マンジャロ投与後もほとんど血圧に変化がなかったと報告されています。

ただし、降圧薬を複数服用している方やもともと血圧が低めの方は、血圧が下がりすぎる可能性がゼロではありません。治療中は定期的に血圧を測定し、めまいやふらつきなどの症状が出た場合は早めに主治医にご相談ください。

マンジャロは降圧薬と一緒に使っても効果が変わりませんか?

SURPASS-1から5のプール解析によると、降圧薬を服用している患者と服用していない患者の間で、マンジャロの血圧低下効果に統計的な差はありませんでした(交互作用のp値=0.77)。

降圧薬との併用でマンジャロの効果が弱まることはないというデータですが、血圧が過度に低下するリスクへの配慮は必要です。併用薬の調整については主治医の判断が必要になりますので、自己判断で薬の量を変えることは避けてください。

マンジャロの降圧効果は体重が減らないと得られないのでしょうか?

体重減少はマンジャロによる降圧効果の主要な要因ですが、それだけではありません。SURPASS-4試験の媒介分析では、血圧低下のうち33〜57%は体重変化とは独立した経路で生じていたと報告されています。

GLP-1受容体を介した腎臓でのナトリウム排泄促進や血管内皮機能の改善など、体重以外の作用経路も降圧に寄与していると考えられています。とはいえ、体重をしっかり管理することが降圧効果を高める近道であることに変わりはありません。

マンジャロは夜間の血圧にも効果がありますか?

SURMOUNT-1のサブスタディ(24時間自由行動下血圧測定)では、マンジャロは昼間の血圧だけでなく夜間の血圧も有意に低下させることが確認されました。夜間血圧の低下幅は昼間とほぼ同等の水準です。

夜間に血圧が十分に下がらない「ノンディッパー型」は心血管リスクが高いとされています。マンジャロが夜間血圧にも効果を示したことは、24時間を通じた血圧管理を考えるうえで意義のある知見でしょう。

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