マンジャロ(チルゼパチド)を使い始めてから「血圧が上がった気がする」と不安を感じている方は少なくありません。臨床試験の結果を見ると、マンジャロは長期的には血圧を下げる方向に働くことが報告されています。
一方で、投与初期に一時的な心拍数の上昇や体調の変化を通じて、血圧が変動するケースも確認されています。この記事では肥満治療の現場で培った知見をもとに、マンジャロと血圧の関係を丁寧にひも解いていきます。
「本当に使い続けて大丈夫?」という疑問に対して、根拠のある情報で安心していただけるよう努めました。ぜひ最後まで読んでみてください。
マンジャロは血圧を上げる薬ではなく、長期的には血圧を下げる効果がある
結論から申し上げると、マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は血圧を上げる薬ではありません。複数の大規模臨床試験において、マンジャロの長期使用は収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)のいずれも有意に低下させることが確認されています。
SURMOUNT-1試験で確認された血圧低下の実績
肥満患者2,539名を対象としたSURMOUNT-1試験では、72週間のマンジャロ投与により、プラセボ(偽薬)と比較して収縮期血圧が約6.8mmHg、拡張期血圧が約4.2mmHg低下しました。投与開始から約24週間で急速に血圧が下がり、その後は安定した状態が続いたと報告されています。
さらに注目すべき点として、マンジャロ投与群の58.0%が72週時点で正常血圧に到達したのに対し、プラセボ群では35.2%にとどまりました。つまり、肥満に伴う高めの血圧がマンジャロによって改善される可能性があるといえます。
メタ分析でも一貫した降圧効果を確認
| マンジャロの用量 | 収縮期血圧の変化 | 拡張期血圧の変化 |
|---|---|---|
| 5mg/週 | -4.20mmHg | 有意に低下 |
| 10mg/週 | -5.34mmHg | 有意に低下 |
| 15mg/週 | -5.77mmHg | 有意に低下 |
「血圧が上がった」と感じる方がいるのはなぜか
臨床データ上、マンジャロは血圧を下げる方向に作用します。それにもかかわらず「血圧が上がった」と感じる方がいるのは、投与初期の身体反応や測定タイミングなど複数の要因が重なっているためでしょう。次の章から、その具体的な原因を一つずつ解説していきます。
マンジャロ開始直後に血圧が一時的に上がる原因と身体の反応
マンジャロの投与初期には、身体がGIP/GLP-1受容体への刺激に適応しようとする過程で、一過性の血圧変動が起こることがあります。長期的な降圧効果とは別の現象として、いくつかの要因が報告されています。
心拍数がわずかに上がることが血圧変動につながる
マンジャロを含むGLP-1受容体作動薬には、心拍数を少し上昇させる作用があります。SURMOUNT-1試験の24時間血圧モニタリングサブスタディでは、マンジャロ15mg群でプラセボに比べて平均5.4拍/分ほどの心拍増加が確認されました。
心拍数が上がると心臓から送り出される血液量が一時的に増えるため、血圧が若干高めに出ることがあります。ただし、この心拍増加はGLP-1受容体作動薬に共通する反応であり、臨床的に問題となるレベルではないと考えられています。
消化器症状による脱水やストレスが影響する場合もある
マンジャロの代表的な副作用として、吐き気や嘔吐、下痢といった消化器症状が知られています。これらの症状が強く出ると、体内の水分やミネラルバランスが崩れやすくなります。
脱水状態では血管内のボリュームが減り、身体が血圧を維持しようと交感神経(身体を緊張させる自律神経)を活性化させるため、結果的に血圧が一時的に上がることがあるのです。嘔吐による身体的ストレスも血圧を変動させる要因の一つでしょう。
| 消化器症状 | 血圧への影響経路 | 対処法 |
|---|---|---|
| 吐き気・嘔吐 | 脱水→交感神経活性化 | 水分補給を意識する |
| 下痢 | 電解質喪失→循環変動 | 経口補水液を活用する |
| 食欲低下 | 塩分・栄養不足 | 少量でもバランスよく食べる |
血圧測定のタイミングや環境で数値が変わりやすい
薬の注射直後や食後、緊張状態で血圧を測ると、普段より高い数値が出ることは珍しくありません。「マンジャロを始めてから血圧が上がった」と思った場合、測定条件が以前と変わっていないかを確認してみてください。毎日同じ時間に、安静にした状態で測ることが正確な血圧把握への第一歩です。
マンジャロと血圧の関係を左右する「体重減少」という要因
マンジャロによる血圧低下の大部分は、体重減少を介して起こります。SURMOUNT-1試験の媒介分析では、収縮期血圧の低下の約68%、拡張期血圧の低下の約71%が体重減少によって説明できると報告されました。
体重が減ると血圧が下がる医学的な理由
体重が増えると、余分な脂肪組織への血液供給を維持するために心臓の仕事量が増えます。同時に、内臓脂肪から分泌される炎症性物質(アディポカインと呼ばれるもの)がインスリン抵抗性や血管の硬化を引き起こし、血圧が上昇しやすくなるのです。
体重が落ちれば、こうした悪循環が解消に向かいます。心臓への負担が軽減し、血管の柔軟性が回復するため、自然と血圧も下がっていくわけです。
体重が減る前の初期段階では血圧効果を感じにくい
マンジャロの用量は2.5mgから段階的に上げていくのが一般的です。投与初期はまだ十分な体重減少が起きていないため、降圧効果を実感しにくい時期といえます。むしろ前述の心拍上昇や消化器症状の影響で、血圧が高めに振れやすい時期でもあるでしょう。
- 投与初期(0〜8週頃):体重変化が小さく、副作用の影響で血圧が変動しやすい
- 投与中期(8〜24週頃):体重減少が本格化し、血圧も徐々に低下傾向へ
- 投与後期(24週以降):体重と血圧の低下が安定し、効果を実感しやすくなる
マンジャロには体重減少とは別の降圧作用も報告されている
興味深いことに、マンジャロの血圧低下効果のすべてが体重減少だけでは説明できません。約30%は体重変化とは独立した経路で生じていると考えられています。GLP-1受容体の活性化によるナトリウム利尿(塩分を尿中に排泄する作用)や血管拡張、さらにGIP受容体を介した血流改善などが関与している可能性があります。
血圧が高い方がマンジャロを使うときに注意すべきポイント
高血圧のある方にとって、マンジャロは肥満改善と血圧コントロールの両方にメリットをもたらす可能性がある薬です。ただし、安全に使うためにはいくつかの注意点を押さえておく必要があります。
降圧薬を服用中の方は血圧の下がりすぎに気をつける
すでに降圧薬(血圧を下げる薬)を飲んでいる方がマンジャロを併用すると、体重減少に伴って血圧が予想以上に下がることがあります。めまいやふらつき、立ちくらみなどの症状が出た場合は、降圧薬の量を調整する必要があるかもしれません。主治医に相談しながら、こまめに血圧を測定していくことが大切です。
自己判断で降圧薬の量を変えてはいけない
マンジャロを始めて血圧が下がったからといって、ご自身の判断で降圧薬を減らしたり中止したりすることは避けてください。急に降圧薬をやめるとリバウンド現象(反跳性高血圧)が起きて、かえって血圧が急上昇するリスクがあります。薬の調整は必ず医師と相談のうえで行いましょう。
家庭での血圧測定を習慣にすると変化を把握しやすい
マンジャロの使用中は、家庭用の血圧計を使って毎日のデータを記録することをおすすめします。朝の起床後と夜の就寝前の2回、同じ姿勢で測定するのが理想的です。記録を診察時に持参すれば、医師も適切な判断がしやすくなります。
| 測定タイミング | 推奨される条件 | 注意点 |
|---|---|---|
| 朝(起床後1時間以内) | 排尿後、朝食・服薬前 | 5分安静にしてから測る |
| 夜(就寝前) | 入浴後30分以上経過後 | 飲酒直後は避ける |
マンジャロで心拍数が上がることと血圧の関係を正しく理解しよう
マンジャロにはGLP-1受容体を刺激する作用があり、この影響で心拍数がわずかに上昇することが知られています。心拍数の上昇と血圧の変動は密接に関連しているため、両者の関係を正しく把握しておくと安心です。
GLP-1受容体作動薬に共通する心拍増加のしくみ
GLP-1受容体は膵臓だけでなく、心臓や血管、脳の自律神経中枢にも存在します。マンジャロがこれらの受容体を活性化すると、交感神経の活動がわずかに高まり、心拍数が上昇すると考えられています。
2型糖尿病患者を対象としたメタ分析では、マンジャロ15mgは対照群と比較して平均約2.96拍/分の心拍増加を示しました。用量依存的な増加パターンが確認されており、5mgよりも10mg、10mgよりも15mgのほうが心拍数への影響が大きくなります。
| マンジャロの用量 | プラセボとの心拍差 | 臨床的な評価 |
|---|---|---|
| 5mg/週 | 約0.4〜2.1拍/分 | ほぼ無視できるレベル |
| 10mg/週 | 約1.4〜2.3拍/分 | 日常生活に影響なし |
| 15mg/週 | 約2.6〜5.4拍/分 | 定期的な確認が望ましい |
心拍数の上昇が必ずしも血圧上昇を意味するわけではない
心拍数が数拍上がっただけで血圧が大きく上昇することは通常ありません。マンジャロの場合、心拍がわずかに増えても、同時に血管拡張作用やナトリウム利尿作用が働くため、血圧そのものは下がる方向に進むのが一般的です。
動悸(ドキドキする感覚)を自覚すると「血圧が上がっているのでは」と心配になるかもしれませんが、実際に血圧計で測ると正常範囲内であることも多いです。不安な場合は、動悸を感じたときに血圧を測って記録しておくと医師への報告に役立ちます。
不整脈のリスクは現時点で高まらないとされている
マンジャロによる心拍増加が心房細動などの不整脈リスクを高めるかどうかについては、現時点では増加を示すデータは報告されていません。臨床試験の心血管安全性データでも、マンジャロは主要心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)のリスクを上昇させないことが確認されています。
マンジャロと他の肥満治療薬で血圧への影響はどう違うのか
肥満治療に用いられる薬はマンジャロのほかにも複数あり、それぞれ血圧への影響が異なります。自分に合った治療選択をするために、代表的な薬との違いを把握しておきましょう。
セマグルチド(GLP-1受容体作動薬)との比較
セマグルチド(オゼンピック/ウゴービ)はGLP-1受容体のみに作用する薬です。血圧を下げる効果はありますが、その幅はマンジャロと比べてやや小さく、収縮期血圧の低下は2〜5mmHg程度と報告されています。マンジャロはGIP受容体にも同時に作用するため、より大きな体重減少と血圧低下が期待できるとされています。
ナルトレキソン・ブプロピオン配合薬は血圧を上げる可能性がある
ナルトレキソン・ブプロピオン配合薬(コントレイブ)は、食欲抑制を目的とした別の作用をもつ肥満治療薬です。この薬にはブプロピオン由来の交感神経刺激作用があるため、血圧が上昇するリスクが指摘されています。高血圧のある方は特に注意が必要な薬といえるでしょう。
マンジャロの血圧降下に加えて脂質改善効果も見込める
マンジャロは血圧だけでなく、総コレステロールやLDLコレステロール(悪玉コレステロール)、中性脂肪を減らし、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やす作用も確認されています。肥満に伴う生活習慣病を包括的にケアできる点は、ほかの肥満治療薬にはない大きな特長です。
| 薬剤名 | 血圧への影響 | 特徴 |
|---|---|---|
| マンジャロ(チルゼパチド) | 長期的に低下(4〜7mmHg程度) | GIP/GLP-1二重作用 |
| セマグルチド | 長期的に低下(2〜5mmHg程度) | GLP-1単独作用 |
| ナルトレキソン・ブプロピオン | 上昇リスクあり | 交感神経刺激作用あり |
二度とあの不安を繰り返さないために|マンジャロ使用中の血圧管理で守りたい生活習慣
マンジャロの効果を十分に引き出しながら、血圧を安定させるためには日常生活のなかでいくつかの習慣を意識することが大切です。薬に頼るだけでなく、生活面からのサポートが治療効果を高めてくれます。
減塩を意識した食事で血圧の土台を整える
| 食品カテゴリー | 減塩のコツ | 目安の塩分量 |
|---|---|---|
| 汁物 | 1日1杯までにする | 味噌汁1杯:約1.5g |
| 加工食品 | ハム・練り物を控える | ハム2枚:約0.8g |
| 調味料 | 醤油は「かける」より「つける」 | 醤油小さじ1:約0.9g |
適度な有酸素運動が血圧を安定させる
ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を週に150分程度行うと、血圧を下げる効果が期待できます。マンジャロによる体重減少と合わせることで、より大きな降圧効果が見込めるでしょう。無理なく続けられるペースで始めることが長続きのコツです。
十分な水分補給で脱水による血圧変動を防ぐ
マンジャロの副作用である吐き気や下痢がある時期は特に、こまめな水分補給を心がけてください。脱水は血圧を不安定にさせる大きな要因です。1日あたり1.5〜2リットルの水やお茶を目安に、少量ずつ飲むようにしましょう。
カフェインやアルコールには利尿作用があるため、水分補給としてはカウントしないほうが安全です。特にアルコールは血圧を乱高下させる原因にもなるので、治療中はできるだけ控えることをおすすめします。
よくある質問
- マンジャロを使い始めてから血圧が上がったのですが、すぐに中止したほうがよいですか?
-
マンジャロの投与初期に血圧が一時的に上がることは、身体が薬に適応する過程で起こりうる反応です。多くの場合、投与を続けるうちに体重が減少し、血圧も安定してきます。
ただし、収縮期血圧が180mmHg以上に達するなど著しい上昇があった場合は、早めに主治医へ相談してください。自己判断で中止するのではなく、医師と一緒に経過を確認しながら治療方針を決めていくことが大切です。
- マンジャロによる血圧低下の効果はどのくらいの期間で実感できますか?
-
臨床試験のデータでは、マンジャロの投与開始から約24週間にかけて血圧が速やかに低下し、その後は安定する傾向が確認されています。ただし、血圧低下の大部分は体重減少に伴って起こるため、用量が低い初期段階では実感しにくいかもしれません。
個人差はありますが、体重が5%以上減少してくると血圧への好影響を感じる方が多いといわれています。焦らずに治療を続けることが大切です。
- マンジャロと降圧薬を一緒に飲んでも問題ありませんか?
-
マンジャロと降圧薬の併用は基本的に可能ですが、体重が大幅に減少すると血圧が下がりすぎることがあります。めまいやふらつき、立ちくらみといった低血圧の症状が出た場合は、降圧薬の減量が必要になることもあるでしょう。
薬の調整は必ず主治医の指示のもとで行ってください。自己判断で降圧薬の量を変えるとリバウンド現象(急激な血圧上昇)を招くおそれがあるため、注意が必要です。
- マンジャロで心拍数が上がると心臓に悪影響がありますか?
-
マンジャロの使用に伴う心拍数の増加は、プラセボと比較して平均2〜5拍/分程度であり、GLP-1受容体作動薬全般に見られる薬理学的な反応です。この程度の心拍上昇で心臓に悪影響が出るという根拠は、現時点の臨床データでは報告されていません。
大規模臨床試験においても、マンジャロは心筋梗塞や脳卒中などの主要心血管イベントのリスクを上昇させないことが確認されています。もともと心臓病を抱えている方は主治医との連携のもとで使用するのが望ましいでしょう。
- マンジャロの投与をやめると血圧は元に戻ってしまいますか?
-
マンジャロの血圧低下効果の約7割は体重減少に依存しています。そのため、投与を中止して体重が戻れば、血圧も元の水準に戻る可能性が高いと考えられます。
肥満は慢性的な疾患であり、治療を継続することで体重と血圧の改善を維持できます。薬の中止を検討する際は、食事管理や運動習慣が十分に身についているかどうかも含めて、主治医とよく話し合うことをおすすめします。
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