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心不全患者へのマンジャロ投与|HFpEFへの有効性と安全性データ

心不全患者へのマンジャロ投与|HFpEFへの有効性と安全性データ

肥満と心不全が重なったとき、治療の選択肢はぐっと狭まります。とくにHFpEF(左室駆出率が保たれた心不全)は長らく有効な薬物治療に乏しく、多くの患者さんが息苦しさやむくみに悩まされてきました。

そんな中、GLP-1受容体作動薬であるマンジャロ(一般名:チルゼパチド)が、大規模臨床試験「SUMMIT試験」で心不全の悪化リスクを38%低減したという結果が報告され、循環器領域で大きな注目を集めています。

この記事では、SUMMIT試験の具体的なデータをもとに、マンジャロがHFpEFにどのような効果を示したのか、副作用はどの程度なのかを、わかりやすく整理してお伝えします。

目次

マンジャロが心不全治療で注目される背景|肥満とHFpEFの深い関係

マンジャロが心不全領域で脚光を浴びる理由は、肥満がHFpEFの発症と進行に直結しているためです。体重を大幅に減らせるマンジャロだからこそ、心臓への負担軽減が期待されています。

HFpEFとは何か|心臓のポンプ機能は正常なのに息切れが起きる

HFpEFは「Heart Failure with preserved Ejection Fraction」の略で、日本語では「左室駆出率の保たれた心不全」と呼ばれます。心臓が血液を送り出す力自体は正常なのに、心臓が硬くなって十分に血液を受け取れず、息切れやむくみが生じる病態です。

心不全と聞くと、心臓のポンプ機能が弱っている状態を想像する方が多いでしょう。しかしHFpEFでは、超音波検査で測定する駆出率(EF)は50%以上と正常範囲を保っています。そのため診断が遅れやすく、症状が進行してから見つかるケースも少なくありません。

なぜ肥満がHFpEFを悪化させるのか

肥満の方は体内の血液量が増加し、心臓に戻る血液の量(前負荷)が大きくなります。同時に全身の血管抵抗も上がるため、心臓にかかる圧力負荷(後負荷)も増大するという二重の負担が生じます。

肥満がHFpEFに及ぼす影響

影響具体的な変化心臓への結果
循環血液量の増加体脂肪に血流が必要前負荷が増大
血管抵抗の上昇高血圧を併発しやすい後負荷が増大
全身性の炎症CRP値などが上昇心筋の線維化が進む
心臓周囲の脂肪蓄積心外膜脂肪が増える心臓の拡張機能が低下

これまでの治療薬ではHFpEFの根本的な改善が難しかった

HFpEFに対しては、SGLT2阻害薬など一部の薬剤で症状改善が報告されていますが、肥満そのものにアプローチする治療は限られていました。利尿薬でむくみや息切れを和らげることはできても、心臓の構造的な変化を食い止めるには至りません。

こうした背景があるからこそ、体重を10%以上減少させる力を持つマンジャロが、HFpEF治療の新たな選択肢として注目を集めているのです。

マンジャロはGIPとGLP-1の2つの受容体に作用する

マンジャロの一般名はチルゼパチド(tirzepatide)で、GIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用する「デュアルアゴニスト」です。GLP-1受容体作動薬のセマグルチド(商品名:オゼンピック、ウゴービ)が単一の受容体に作用するのに対し、マンジャロは2つの経路を同時に刺激します。

その結果、食欲抑制と血糖コントロールの両面でより強力な効果が得られ、臨床試験では体重を約12〜21%減少させたと報告されています。この大幅な減量効果が、心臓への恩恵をもたらす鍵になっています。

SUMMIT試験の全体像|マンジャロのHFpEFに対する世界初の大規模試験

SUMMIT試験は、マンジャロ(チルゼパチド)がHFpEFの臨床転帰を改善するかどうかを検証した、世界初の大規模ランダム化比較試験です。9か国731名の患者を対象に、心不全の悪化や心血管死亡のリスクへの影響を調べました。

試験デザインと対象患者の条件

SUMMIT試験は国際的な二重盲検プラセボ対照試験として実施されました。対象は、左室駆出率50%以上のHFpEF患者で、かつBMI30以上の肥満を有する731名です。

参加者は1対1の割合でマンジャロ群(364名)とプラセボ群(367名)に無作為に振り分けられました。マンジャロは週1回の皮下注射で、2.5mgから開始し、4週ごとに増量して20週目までに15mgの維持量を目指す設計です。追跡期間の中央値は104週(約2年間)にわたります。

2つの主要評価項目で効果を検証した

SUMMIT試験には、2つの主要評価項目(プライマリーエンドポイント)が設定されました。1つ目は、心血管死亡または心不全悪化イベントの複合エンドポイントです。2つ目は、52週時点でのKCCQ-CSS(カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア)の変化量で、これは患者さん自身が感じる症状や生活の質を数値化したものです。

スコアは0〜100点で、点数が高いほど生活の質が良好であることを意味します。つまり、「心臓の病気が悪くならないこと」と「日常生活が楽になること」の両面から、マンジャロの効果を評価しています。

SUMMIT試験に参加した患者さんの特徴

参加者の平均BMIは38を超えており、高度肥満に該当する方が中心でした。約半数が2型糖尿病を合併しており、冠動脈疾患や心房細動を持つ方も含まれています。NYHA心機能分類ではクラスIIからIVの症状があり、日常動作で息切れを感じる段階の患者さんが対象です。

背景治療として、利尿薬やACE阻害薬、ARBなどを服用している方が多く、SGLT2阻害薬の併用は約17%にとどまりました。

SUMMIT試験の概要

項目マンジャロ群プラセボ群
人数364名367名
投与方法週1回皮下注射週1回皮下注射
維持量15mg/週
追跡期間中央値104週(約2年)
実施国数9か国

マンジャロは心血管死亡と心不全悪化を38%減らした|SUMMIT試験の主要結果

SUMMIT試験の結果、マンジャロ群ではプラセボ群に比べて心血管死亡または心不全悪化のリスクが38%低下しました。心不全の悪化イベント単独では46%の低減が示されており、臨床的に意義のある結果といえます。

複合エンドポイントのハザード比は0.62

主要評価項目である心血管死亡・心不全悪化イベントの複合エンドポイントは、マンジャロ群で36名(9.9%)、プラセボ群で56名(15.3%)に発生しました。ハザード比は0.62(95%信頼区間:0.41〜0.95、P=0.026)で、統計的にも有意な差がついています。

わかりやすくいえば、マンジャロを使った群は使わなかった群と比べて、心臓の病気が悪化するリスクがおよそ4割減ったということです。

心不全の悪化イベントだけを見ると46%の減少

心不全悪化イベント(入院や緊急受診など)に絞ると、マンジャロ群は29名(8.0%)、プラセボ群は52名(14.2%)でした。ハザード比0.54(95%信頼区間:0.34〜0.85)という数値は、ほぼ半減に近い効果を示しています。

主要結果の数値比較

評価項目マンジャロ群プラセボ群
複合エンドポイント発生率9.9%15.3%
ハザード比(複合)0.62(P=0.026)
心不全悪化イベント8.0%14.2%
ハザード比(心不全悪化)0.54

生活の質スコア(KCCQ-CSS)も大幅に改善した

52週時点でのKCCQ-CSSの改善幅は、マンジャロ群で19.5ポイント、プラセボ群で12.7ポイントでした。両群の差は6.9ポイント(P<0.001)で、これは臨床的に意味のある閾値(5ポイント以上)を上回っています。

つまり、マンジャロを投与された患者さんは、日常のなかで「息切れが楽になった」「動きやすくなった」と実感できるレベルの変化を得られたということです。

6分間歩行距離も18m以上延びた

52週時点の6分間歩行距離(6MWD)の改善幅にも、18.3mの有意な差がつきました(P<0.001)。6分間歩行距離は心不全患者さんの運動耐容能を評価する指標で、歩ける距離が伸びるほど日常生活の活動範囲が広がることを意味します。

マンジャロが心臓の構造と炎症を改善する仕組み|体重減少だけではない

マンジャロの心不全への効果は単なる減量の結果ではなく、循環血液量の減少、心臓周囲の脂肪の縮小、全身性炎症の抑制など、複数の経路が関係していると考えられています。

循環血液量と血圧の低下で心臓の負担が軽くなる

SUMMIT試験の副次解析では、マンジャロ投与群で推定循環血液量が有意に減少しました。肥満のHFpEF患者さんは体内の血液量が過剰に増えている状態にあり、心臓が常にパンパンに引き伸ばされています。マンジャロはこの過剰な血液量を減らすことで、心臓の負荷を和らげます。

収縮期血圧も低下しており、血圧が下がることで心臓が血液を押し出す際の抵抗も小さくなります。循環血液量の減少はKCCQ-CSSの改善や6分間歩行距離の延長とも相関していたことが報告されています。

心臓周囲の脂肪(心外膜脂肪)が減少する

SUMMIT試験のCMR(心臓MRI)サブスタディでは、マンジャロ群でプラセボ群に比べて心臓周囲の脂肪(心外膜脂肪+心膜脂肪)が有意に減少していました。心外膜脂肪は心筋に炎症性サイトカインを放出し、心臓の拡張機能を障害すると考えられています。

この脂肪が減ることで、心筋への悪影響が軽減されるわけです。同じGLP-1受容体作動薬であるセマグルチドの試験では心外膜脂肪の有意な減少は確認されておらず、マンジャロのデュアルアゴニストとしての特性が影響している可能性があります。

全身性の炎症が抑えられ、心筋ダメージが軽減される

マンジャロ投与群ではCRP(C反応性タンパク、炎症のマーカー)が低下し、トロポニンT(心筋障害のマーカー)も有意に減少しました。CRPの低下は6分間歩行距離の改善と相関し、トロポニンTの低下幅は52週時点で10.4%でした(P=0.003)。

慢性的な炎症は心筋の線維化を進め、心臓を硬くしてHFpEFを悪化させます。マンジャロが炎症を抑えることで、こうした悪循環を断ち切る効果が期待されています。

腎機能の保護効果も示された

マンジャロ群では推算糸球体濾過量(eGFR)の年間変化に2.90mL/min/1.73m²の有意な差がつきました(P=0.004)。尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)も24週時点で25%低下しています。

HFpEF患者さんは腎臓にも負担がかかりやすく、腎機能の低下が心不全をさらに悪化させる「心腎連関」が問題になります。マンジャロが腎臓の機能を守ることは、心不全の管理においても大きな意味を持ちます。

マンジャロが心臓と全身に及ぼす効果の整理

作用指標の変化臨床的な意義
循環血液量の減少有意に低下心臓の前負荷を軽減
血圧低下収縮期血圧が低下心臓の後負荷を軽減
心外膜脂肪の縮小CMRで有意に減少心筋への炎症刺激を低減
CRP低下全身性炎症が改善心筋線維化の抑制
トロポニンT低下10.4%減少心筋障害の軽減
eGFR改善年間2.90の差腎機能の保護

マンジャロ投与で報告された副作用|消化器症状が中心だが重篤な有害事象は少ない

SUMMIT試験で報告された主な副作用は消化器症状(吐き気、下痢、便秘など)であり、投与中止に至った有害事象はマンジャロ群6.3%、プラセボ群1.4%でした。重篤な心血管系の有害事象の頻度に両群間で大きな差はありません。

消化器症状が副作用の大部分を占める

GLP-1受容体作動薬に共通する副作用として、吐き気・嘔吐・下痢・便秘といった消化器症状が報告されています。これらは投与開始初期や増量時に出やすく、多くの場合は継続投与のなかで徐々に軽減していきます。

SUMMIT試験では有害事象による投与中止がマンジャロ群で23名(6.3%)、プラセボ群で5名(1.4%)でした。中止の大半は消化器症状が原因であり、命にかかわるような重篤な副作用によるものではありません。

心血管系の安全性はどうだったのか

  • 心血管死亡はマンジャロ群2.2%、プラセボ群1.4%で統計的に有意な差はなし
  • 心不全悪化イベントはマンジャロ群で大幅に減少
  • 低血糖症の報告は非常に少ない

心血管死亡率はマンジャロ群でわずかに高い数値が出ていますが、統計的に有意な差ではなく、偶然の範囲内と考えられています。イーライリリー社が進めている別の大規模心血管アウトカム試験の結果が、今後さらに安全性データを補完する見込みです。

副作用を軽減するための段階的な増量スケジュール

マンジャロは2.5mgという低用量から開始し、4週間ごとに段階的に増量する設計になっています。この漸増方式は、消化器症状を最小限に抑えることを目的としたものです。SUMMIT試験でも同様のスケジュールが採用され、20週目までに目標の15mgに到達する計画でした。

いきなり高用量を投与するのではなく、身体を慣らしながら用量を上げていくため、副作用が出た場合にも増量の一時停止や減量で対応できるという利点があります。

セマグルチドとの違い|マンジャロのデュアルアゴニストとしてのHFpEF治療効果

同じGLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(ウゴービ/オゼンピック)もHFpEFに対する効果が報告されていますが、マンジャロはGIPとGLP-1の2つの受容体に同時に作用する点で異なり、より大きな体重減少と心構造リモデリングの改善が示されています。

STEP-HFpEF試験との比較で見えてくる差

セマグルチドを用いたSTEP-HFpEF試験でも、KCCQ-CSSや6分間歩行距離の改善が報告されました。しかし、STEP-HFpEF試験では心血管死亡・心不全悪化イベントの複合エンドポイントは主要評価項目に設定されておらず、マンジャロのSUMMIT試験のように「心不全のハードアウトカム」に対する有効性を直接検証した試験ではありませんでした。

つまり、セマグルチドでは「症状がよくなった」という報告が中心であるのに対し、マンジャロでは「心不全の悪化イベントそのものが減った」という一歩踏み込んだ結果が得られています。

心外膜脂肪の減少効果にも違いがある

SUMMIT試験のCMRサブスタディでは、マンジャロ群で左室心筋重量が平均11g減少し、心外膜脂肪も有意に縮小しました。一方、STEP-HFpEF試験では心エコーによる評価で心外膜脂肪の有意な減少は確認されていません。

計測方法の違い(MRIとエコー)も影響している可能性はありますが、GIPとGLP-1への二重作用が心臓周囲の脂肪に対してより強く働いている可能性を示唆するデータです。

体重減少の幅にも差がある

SUMMIT試験ではマンジャロ群がプラセボ群と比べて約11〜12%の体重減少を達成しました。セマグルチドのSTEP-HFpEF試験での体重減少幅は約7〜10%と報告されており、マンジャロのほうがやや大きな減量効果を示しています。

体重減少が大きいほど循環血液量や血圧も改善しやすいため、HFpEFの病態改善にはこの差が影響している可能性があります。ただし、両薬を直接比較したランダム化試験はまだ存在しないため、現時点では間接比較のデータであることに留意が必要です。

マンジャロとセマグルチドのHFpEF関連データ比較

項目マンジャロ(SUMMIT)セマグルチド(STEP-HFpEF)
作用受容体GIP+GLP-1GLP-1のみ
心不全ハードアウトカム38%リスク低減主要評価項目に含まず
体重減少(対プラセボ)約11〜12%約7〜10%
心外膜脂肪減少MRIで有意に確認エコーで有意差なし

マンジャロをHFpEF治療に用いる際に知っておきたい注意点と今後の課題

SUMMIT試験はマンジャロのHFpEFに対する有効性を示しましたが、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。現時点での限界や、治療を検討するうえで押さえておくべきポイントを整理します。

対象はBMI30以上の肥満を伴うHFpEF患者に限られる

SUMMIT試験の参加条件はBMI30以上の肥満を有するHFpEF患者であり、非肥満のHFpEF患者に対する効果は検証されていません。HFpEFは原因が多岐にわたる疾患であり、肥満が主因でないタイプの患者さんに同じ効果が期待できるとは限らないでしょう。

マンジャロのHFpEF投与に関する注意点

  • BMI30未満の患者に対するデータは存在しない
  • 左室駆出率が50%未満の心不全(HFrEF)は対象外
  • SGLT2阻害薬との併用データは限定的(試験参加者の約17%のみ)
  • 消化器症状による投与中止の可能性(約6%)

SGLT2阻害薬との併用効果はまだ十分に検証されていない

HFpEF治療で広く使われ始めているSGLT2阻害薬(ダパグリフロジンやエンパグリフロジンなど)を併用していた参加者はSUMMIT試験全体の約17%にとどまります。そのため、マンジャロとSGLT2阻害薬を組み合わせた場合の追加効果や安全性については、今後さらなるデータの蓄積が求められます。

両薬は作用の仕組みが異なるため、理論的には併用のメリットが期待されますが、エビデンスが十分に揃っていない現段階では、主治医と相談のうえで判断する姿勢が大切です。

心血管アウトカム試験の追加データが待たれる

マンジャロの心血管安全性については、2型糖尿病患者を対象とした大規模心血管アウトカム試験(CVOT)の結果が別途進行中です。SUMMIT試験では心血管死亡がマンジャロ群でわずかに多い傾向(2.2% vs 1.4%)が見られましたが、統計的に有意ではなく、症例数も少ないため確定的な結論は出ていません。

今後、より大規模な試験データが報告されることで、マンジャロの心血管に対する長期的な安全性がさらに明確になっていくと考えられます。治療を検討されている方は、担当の医師と相談しながら判断することをおすすめします。

よくある質問

マンジャロ(チルゼパチド)はHFpEFに対してどのような効果を示したのか?

SUMMIT試験の結果、マンジャロ(チルゼパチド)はHFpEFと肥満を合併した患者さんにおいて、心血管死亡または心不全悪化の複合リスクを38%低減しました。ハザード比は0.62で、統計的に有意な結果です。

さらに、患者さんの生活の質を評価するKCCQ-CSSスコアも52週時点でプラセボ群と比べて6.9ポイント多く改善しており、息切れや日常動作の改善が数値でも裏付けられています。

マンジャロの心不全への効果は体重減少だけによるものなのか?

体重減少は重要な要因の1つですが、それだけではありません。SUMMIT試験の副次解析から、マンジャロは循環血液量の減少、収縮期血圧の低下、心臓周囲の脂肪(心外膜脂肪)の縮小、全身性炎症マーカーであるCRPの低下など、複数の経路を通じてHFpEFの病態を改善していることが示されています。

トロポニンT(心筋障害のマーカー)の低下も確認されており、心筋へのダメージを軽減する作用も報告されました。

マンジャロをHFpEF治療に使用した場合の主な副作用は何か?

SUMMIT試験で報告された主な副作用は、吐き気・嘔吐・下痢・便秘などの消化器症状です。有害事象により投与を中止した患者さんはマンジャロ群で6.3%、プラセボ群で1.4%であり、中止理由の大部分が消化器症状でした。

低用量の2.5mgから開始して段階的に増量するスケジュールが採用されており、身体を慣らしながら用量を上げることで副作用の軽減が図られています。重篤な心血管系の有害事象に有意な差はありませんでした。

マンジャロとセマグルチドではHFpEFへの効果にどんな違いがあるのか?

マンジャロはGIPとGLP-1の2つの受容体に作用するデュアルアゴニストであるのに対し、セマグルチドはGLP-1受容体のみに作用します。マンジャロのSUMMIT試験では心血管死亡・心不全悪化イベントの有意なリスク低減が確認されましたが、セマグルチドのSTEP-HFpEF試験ではこの項目は主要評価項目に含まれていません。

体重減少の幅はマンジャロが約11〜12%、セマグルチドが約7〜10%と報告されており、心臓MRIによる心外膜脂肪の減少もマンジャロで有意に確認されています。ただし、両薬を直接比較した臨床試験はまだ実施されておらず、間接比較の範囲にとどまるという点にご留意ください。

マンジャロのHFpEFに対する効果は肥満でない心不全患者にも当てはまるのか?

現時点では当てはまりません。SUMMIT試験の対象はBMI30以上の肥満を合併したHFpEF患者に限定されており、非肥満のHFpEF患者さんに対する有効性を検証したデータは存在しません。

HFpEFは肥満以外にも加齢、高血圧、糖尿病などさまざまな要因が関わる疾患です。肥満が主たる要因でないタイプのHFpEFに対してマンジャロが同様の効果を持つかどうかは、今後の研究で明らかにされる必要があります。

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