多彩な症状が現れる強皮症 検査と治療について解説

藤井あさ美

こんにちは。皮膚科専門医の藤井あさ美(医学博士)です。

強皮症は、日本では、約2万人の患者さんが国の難病認定を受けている、免疫の異常をきっかけに全身の皮膚や内臓が硬くなる病気です。

強皮症の原因はいまだに不明ですが、免疫の乱れによって産生される「自己抗体」が誤った免疫応答を引き起こすことで、組織の線維成分が過剰にふえる「線維化」と、組織の血流を妨げる「血管障害」とをもたらすことが、主な要因と考えられています。

治療方法にはまだ確立したものがなく、基本は対症療法となりますが、免疫抑制薬やステロイド薬をはじめとした薬物治療と生活習慣の是正を組み合わせることで、内臓の線維化の抑制やレイノー現象などの症状改善に。

本記事では、強皮症の診断、治療のポイントについてまとめ、さらに、症状の軽減につながる日常生活上の注意点や食事療法についてもご紹介します。

強皮症とは

強皮症は、早期の診断、治療が必要な病気です。強皮症の進行によって、いったん硬くなってしまった臓器の線維化は、治療を行っても元にもどることはありません。

一般に、全身性強皮症患者では、発症6年以内に皮膚病変が進行し、その間に心臓、肺、腎臓、消化管など、全身の臓器障害が進行。また、重篤な皮膚硬化の7割が6年以内に起こることも報告されています。

日本皮膚科学会のガイドラインでは、

  • 皮膚硬化出現6年以内のびまん皮膚硬化型強皮症
  • 数か月から1年以内に進行する急速な皮膚硬化の進行
  • 触診でむくみの強い皮膚硬化

のうち、2項目以上を満たす場合に治療開始が推奨されています1)

強皮症を疑ったら、はやめに医療機関を受診して、適切な治療開始の時期を検討してください。

強皮症の診断基準

強皮症の診断については、厚生労働省研究班が提唱している診断基準を参考に。

それぞれ以下のような項目が挙げられています。

【大基準】

両手指の範囲を越える皮膚の硬化

【小基準】

①手指に限局する皮膚の硬化

②2本以上の指に認められる爪の点状出血など毛細血管の異常

③(循環障害に伴う)手指尖端の陥凹性瘢痕、あるいは指先の潰瘍

④横隔膜に近い部位の肺のレントゲン異常(間質性陰影)

⑤自己抗体(抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼ抗体)のいずれかが陽性

【除外基準】

強皮症に似た他の疾患(腎性全身性繊維省、汎発型限局型強皮症、好酸球性筋膜炎 etc.)を除外すること

大基準、あるいは小基準①および②~⑤のうち1項目を満たすことで全身性強皮症と診断できますが、他の疾患の除外は専門医でなければ容易ではありません。

必ず医療機関を受診して、膠原病内科専門医や皮膚科専門医に診断をゆだねましょう。

血液検査は診断に重要

血液検査のうち、抗体検査とホルモン検査は、強皮症患者さんの病気の勢いや内臓の病変の進み具合を確認するために重要な検査です。

とくに、抗体検査は強皮症の診療において重要です。抗体検査は診断のみならず、将来の病気の広がりを予測する上でも役に立つからです。

例えば、皮膚硬化が手足や顔にとどまるタイプの限局型強皮症において、血液中に抗Scl-70抗体や抗RNAポリメラーゼⅢ抗体、抗U3RNP抗体という自己抗体が認められる方が。

これは、皮膚硬化が体幹にまで及ぶびまん皮膚硬化型強皮症へ移行する可能性が高いことを示唆。

一方、抗セントロメア抗体という自己抗体陽性の方は、皮膚硬化が進行しにくいと言われています。

また、強皮症に併発することの多い肺高血圧症の進行例である右心不全を発症された方の血液中では、血中脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)や、その前駆体であるNT-proBNPというホルモンの数値が上昇。

これらのホルモン値の上昇は、動脈血液ガス分析や心臓超音波検査など、より精密な検査を行うべき患者さんを発見するためのスクリーニング検査として役立ちます。

このように、病気の進行や重症度の評価に有用な自己抗体やホルモンを簡便かつ低侵襲に測定できる血液検査は、強皮症の診療に欠かせないツールです。

呼吸機能検査

肺機能検査は、肺病変の早期発見につながります。強皮症患者さんでは、無症状であるにもかかわらず、発症後早期の段階から肺の組織硬化が進行する間質性肺病変をきたす方も。

そのような方の努力肺活量を調べることで、間質性肺病変を早期に発見し、治療強化のタイミングを適切に判断することができるようになります。

さらに、肺機能検査は、強皮症に併発することの多い肺高血圧症や右心不全の診断の手掛かりにも。強皮症に伴う心肺病変の早期発見という観点から、肺機能検査は重要な検査です。

レントゲン検査

強皮症の診療においては、胸部のエックス線検査が欠かせません。なぜなら、強皮症においては、前述の間質性肺病変や肺高血圧症による右心不全をきたすことが多いからです。

これらの病変を併発した方の胸部エックス線では、線維化によってすりガラスのような肺の影がみられたり、大動脈や肺動脈など太い血管が拡大したり、肺の表面に近い細い末梢の血管の陰影が薄くなる所見が認められます。

また、手足やおしりの皮膚にカルシウムが沈着し、皮下の硬結を伴う石灰沈着がみられることも。皮膚や軟部組織に沈着した石灰化病変を発見する上で、エックス線検査が有用です。

皮膚石灰沈着に対する治療として、ワーファリン(血液をサラサラにする抗凝固薬)の少量投与での有効性が報告されています1, 2)

強皮症の経過観察中に、息切れや倦怠感、皮膚の硬結など気になる症状が認められる場合は、臓器障害の早期発見に努めるのがよいでしょう。

聴診や視診などの全身診察

また、診断の全てを検査に頼るのではなく、聴診や視診などの身体的診察によって強皮症の病変の進行をチェックすることも大変重要

病変があまりに早期である場合、皮膚の硬化や内臓障害を反映する徴候が、レントゲンや血液検査だけでは捉えきれないこともあるからです。

労作時の呼吸困難や、運動耐容能の低下、その他の呼吸器症状に関して、かかりつけの先生から注意深く病歴を聴取してもらうことで、間質性肺病変や肺高血圧症の早期発見につながります。

身体所見では、肺性II音という肺動脈音の亢進や、息を吸ったときに増強する収縮期雑音(Rivero-Carvallo徴候とよばれる)などの異常が。

右心不全を併発した方では、低酸素血症に伴うチアノーゼという皮膚の色調変化、肺動脈の圧力が高く、心臓から押し出された血液による頸部の血管拡張(頚静脈怒張)。

さらには、下半身からの血液が心臓に戻れず、静脈うっ滞をきたすことによる肝腫大、腹水、下腿浮腫などが出現します。

病変が腎臓にまで波及し、腎クリーゼに至ると、急激な血圧変動や頭痛など全身的なバイタルサインの変化にも留意する必要が。

また、嚥下困難や舌小帯短縮など問診や視診によって見つかる消化管病変の進行徴候もあります。

このように、強皮症の診療においては、レントゲン検査や血液検査だけに頼るのではなく、医師との対面の診察を通して、病気の進行のサインを見逃さず、綿密な管理を行いましょう。

強皮症の治療は対症療法

強皮症の治療は、症状に対する対症療法が基本となります。なぜなら、根本的な原因を取り除き、完治させる治療方法がまだ確立されているわけではないからです。

ただし、ステロイド薬や免疫抑制薬には、臓器障害に対する一定の進行抑制効果が期待されます。

対症療法を基本としつつも、薬物治療、生活療法を組み合わせて症状をコントロールして、病気の進行を遅らせることが治療の目標に。

生活指導

強皮症の治療において、生活習慣の改善が重要です。日常生活の注意点を守ることで、症状のコントロールが期待できます。

強皮症では、病気の進行とともに、食道や胃など上部消化管の蠕動運動の低下が。

日本のガイドラインでは、脂質や糖質の過剰摂取を避け、アルコールや喫煙を控えること、食事は小分けにして少量ずつ頻回に摂取する分割食をこころがけること、さらには、食後数時間は横にならないことなどの生活習慣の改善がすすめられています1)

小腸・大腸などの下部消化管蠕動運動低下から便秘をきたすことも多く、積極的な水分摂取を心掛けることに加え、高線維成分の食品を避けることが望ましいです。

また、腸管粘膜の硬化によって、栄養成分の吸収も悪くなるので、脂溶性ビタミンや低残渣食、成分栄養、中鎖脂肪酸などの栄養補充をこころがける必要があります。

食事療法に関しては、医師や栄養士からの専門的なアドバイスをもらいながら、日々の療養に生かしましょう。

免疫抑制薬

強皮症の主な原因は免疫の異常であるため、薬物治療手段として、副腎皮質ステロイドやシクロホスファミドなどの免疫抑制薬が用いられます。

シクロホスファミドは肺病変に対する治療で有効性が示されている薬剤。皮膚硬化にも有意な改善効果があることが知られています3)

シクロホスファミド
引用元:塩野義製薬

ただし、シクロホスファミドは発癌性や生殖機能抑制、免疫抑制などの観点から長期の連用には注意が必要な薬剤です。

同剤の副作用の最小化と有効性維持を目的としたステロイドや他の免疫抑制剤との併用療法も提唱されています。

副腎皮質ステロイド薬

免疫や炎症を抑える作用をもつ副腎皮質ステロイド薬は、強皮症だけではなく、免疫の異常が関わる膠原病全般において薬物治療の中心的です。

強皮症の主な原因は、免疫の乱れによって体内で産生された自己抗体が、結合組織の線維化、血管障害を引き起こすこととされ、ステロイド薬は免疫の乱れを抑えることで病気の進行を食い止める作用が期待されます。

しかし、これまでの研究結果から、強皮症に対するステロイド薬の有効性が完全に確立されているわけではありません。

また、欧米に比べ日本人では稀ですが、ステロイド薬の使用が、腎クリーゼのリスク増加と関連するという見解もあることから、我が国のガイドラインでは、比較的発症早期で、急速に皮膚硬化が進行する患者さんに限定した使用が推奨されています1)

その他、ステロイド薬の一般的な副作用には、感染症にかかりやすくなったり、糖尿病になりやすくなったり、骨がもろくなったりもすることにも注意が必要です。

治療のメリットとデメリットのバランスを考えたうえで、主治医の先生とよく相談しながら治療を検討いただく必要があります。

レイノー現象の治療

強皮症に伴ってよく見られるレイノー現象は、指先の血行障害による色調変化や疼痛を主な症状とする合併症です。

レイノー現象

症状緩和を目的とした薬物治療として、プロスタグランジン製剤やカルシウム拮抗薬、レニンアンジオテンシン系阻害薬などに有効性が。

これらの薬剤は、血管収縮に対して血管拡張物質の産生を促したり、血管収縮に関連するホルモン合成をブロックしたりすることでレイノー現象の症状を軽減する可能性があります。

いずれの薬剤も、レイノー現象を根治させる治療ではありませんが、強皮症は長期的に付き合っていかなければいけない病気ですので、対症療法による症状のコントロールも大事な基本的治療です。

まとめ

強皮症は初期症状として、まず皮膚硬化が、その後、年単位で病状が進むにつれ、肺や腎臓などの内臓病変が出現。

皮膚硬化については、自然軽快が認められることがある一方、内臓病変については、自然回復は期待できないことが知られており、できるだけ内臓障害の早期に診断して、心臓や腎臓、肺など内臓の病変進行を抑える治療の必要性を判断する必要があります。

このため、皮膚科や膠原病内科など専門医の慎重な管理のもと、継続的に検査や診察を行い、全身の多臓器に対する定期観察が必要です。

本記事を通じて、強皮症の検査や治療、日常生活上の療養のポイントに対する理解を深めて頂き、日々の治療継続に役立てていただければと思います。

参考文献

1. 浅野善英ら. 全身性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン. 日本皮膚科学会雑誌 126:1831-1896, 2016.

2. Berger RG, et al. Treatment of calcinosis universalis with low-dose warfarin. The American journal of medicine. 83:72-76, 1987. doi: 10.1016/0002-9343(87)90499-2.

3. Tashkin DP, et al. Cyclophosphamide versus Placebo in Scleroderma Lung Disease. New England Journal of Medicine. 354:2655-2666, 2006. doi: 10.1056/NEJMoa055120.

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