メルケル細胞癌とは?早期に発見するための特徴や治療法

藤井あさ美

こんにちは。皮膚科専門医の藤井あさ美(医学博士)です。

一般的にウイルスというと、感染し熱などが出るものというイメージをお持ちかと思いますが、ウイルスが熱など特に症状を出さずに、皮膚がんに関係していることがあるのはご存知でしょうか?

ウイルスとがん、一見すると何にも関係性がなさそうですが、ポリオーマウイルスというウイルスが関与する皮膚がんのメルケル細胞癌について、今日は書きたいと思います。

メルケル細胞癌は珍しい皮膚がんの一種

メルケル細胞癌とは、皮膚がんの一つで、いわゆる悪性腫瘍(がん)です。皮膚がんの中でも、非常に珍しい種類のがん。

治療後でも繰り返し再発することもあり、リンパ節などに転移しやすい悪性度の高い皮膚がんの一つです。悪性度が高いということは、残念ながら生命予後が良くありません

メルケル細胞癌は、皮膚の中に存在するメルケル細胞(Merkel cell)という細胞が、がん化して発症します。

メルケル細胞は、1875年にドイツの解剖学者のメルケル先生(Friedrich Sigmund Merkel)が発見したのが名前の由来。メルケル細胞は皮膚の触られた感覚を、脳に伝えることをしている細胞です。

男性より女性に多く、年齢は若い方よりは高齢の方に多く発生するという特徴があります1)

原因は紫外線やウイルス感染が有力

メルケル細胞癌の原因は、紫外線による皮膚のダメージや、ポリオーマウイルスというウイルスが関係していると考えられています。

メルケル細胞がん
引用元:nature

ポリオーマウイルスとは、しばしばがんを引き起こすウイルスです。感染経路は、おそらく口から入ってくるのではないか、と考えられています。ただし、感染しているすべての人にがんを引き起こすわけではありません。

ポリオーマウイルスは日光に当たることによって活性化し、傷ついた細胞を正常に治す機能の妨害をしています2) 。そのため、がん化する可能性が高くなると考えられているのです。

メルケル細胞癌には、ポリオーマウイルスが関与するものと、関与しないものがあると言われています。

メルケル細胞癌の症状

症状は、一言でいうと、できもの(皮膚腫瘤)です。大きさは直径約1ー3cmで、色は淡い赤色。触ると硬く、横から見るとドームのように盛り上がっているのが特徴です。

発生しやすい場所は、頭や首。これは、紫外線が関与するためと考えられています。

痛みやかゆみなどの自覚症状はないことが多く、目で見て病気に気がつくという患者さんが多い印象です。

メルケル細胞癌の検査・診断でよく似た別の悪性腫瘍を否定

多くの場合、皮膚科の医師の視診や触診と、皮膚生検という皮膚の一部を取り精密検査を行います。

皮膚生検とは、局所麻酔を使用して、皮膚のできものの一部をメスなどで切り取る検査です。切り取った皮膚は、病理検査といって、顕微鏡を用いた検査を行います。

メルケル細胞癌は、その他の皮膚がん・無色素性の悪性黒色腫・悪性リンパ種・肺小細胞癌の皮膚転移などと似たような症状が出ることがあるので、注意が必要です。

無色素性の悪性黒色腫

皮膚がんの一つで、悪性黒色腫(メラノーマ)というがんの黒い色がついていないものです。悪性黒色腫は、メルケル細胞癌と同じ様に悪性度の高い皮膚がんの一つ。悪性黒色腫も視診や触診では判断が難しいため、皮膚生検によって診断を確定します。

悪性黒色腫メラノーマ

悪性リンパ種

血液のがんで、自分の血液の中にあるリンパ球という細胞ががん化したものです。悪性リンパ種は、全身のさまざまな場所で発症しますので、皮膚にも症状がでることが。診断は症状の出た部位の病理検査を行います。

肺小細胞癌の皮膚転移

メルケル細胞癌と非常に似た症状を出すことがありますので注意が必要です。疑った場合は、肺がんの検索も。

肺小細胞癌の皮膚転移も皮膚生検です。CK20という特殊な免疫染色を使うことによって肺小細胞癌の皮膚転移か、メルケル細胞癌かの区別をします。

メルケル細胞癌の鑑別となる病気の多くは、いずれも悪性度が高く、治療が必要です。痛みがなくても、顔などにドーム状の赤いできものがみられる場合は、一度皮膚科で相談してみるといいでしょう。

メルケル細胞癌の治療は、まず手術

メルケル細胞癌は皮膚がんですので、基本的には手術での切除。治療は、がんの進行具合によって変わりますが、転移や再発する可能性が高いため、腫瘍部を大きく深く手術で取り、必要に応じて腫瘍近くのリンパ節も取り除きます。

手術療法は、全身麻酔や局所麻酔を用いるので大掛かりな設備が必要になることが多く、できる施設が限定されます。また、どうしても麻酔などの合併症・手術部の創部感染などを起こす可能性も。

手術療法に加えて、放射線治療や化学療法も行うこともあります。

放射線治療は、リニアックという機械を用いて、体の外から病巣部に放射線をあてて治療。病巣部以外の正常な部分にも放射線があたってしまうため、副作用が起こることがあります。

主な副作用は、倦怠感・疲労感・貧血・出血しやすくなることなどです。二次性にがんを作ってしまうことも。

化学療法は、点滴や注射や内服の抗がん剤などを用いて、がん細胞の増殖を抑えたりがん細胞を破壊したりします。化学療法は、投与されると全身に作用しますので、体中のがん細胞に効果が。

ただ、全身に作用しますので副作用は避けて通れません。全身に作用するということはメリット・デメリットがあるのです。

副作用があると言っても、もちろん効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるように治療は行っていきます。

主な副作用は、投与当日はじんましんや発熱等、数日後に吐き気や食欲不振等、数週間後に白血球減少や脱毛、口内炎等、数カ月後に爪や皮膚の変化等です。

2017年より、今までの薬よりも治療効果の高い3)バベンチオ(一般名:アベルマブ)という薬が手術不可能なメルケル細胞癌に対して使えるようになりました。

バベンチオ
引用元:Merck 

バベンチオは抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の一種であり、免疫系に作用するタイプの薬剤です。

免疫とは、侵入してきた異物を攻撃し、排除する体の機能。がん細胞は特殊な働きにより、この免疫から逃れ増殖していきますが、免疫チェックポイント阻害薬によって免疫が本来の働きを取り戻し、がん細胞を攻撃し排除していきます。

ただし、肺炎・肝機能異常・神経障害・アレルギー・腎機能障害などさまざまな副作用を起こすことが。

現在、メルケル細胞癌は残念ながら確立した標準治療が無く、患者さんの病気の進行などによって治療方法を決定していきます。手術療法・放射線治療・化学療法を組み合わせて治療を行うことも。

メルケル細胞癌は前述の通り、再発や転移の可能性も高い皮膚がんです。治療後も再発の可能性は12~50%、リンパ節転移の可能性は17~76%、他の臓器に転移してしまう遠隔転移は12~50%。

なかなか治療効果が出ず、病期(ステージ)が進んでしまった場合には、身体的な痛みや精神的な苦しみ等を取り除く緩和療法を行うこともあります。

メルケル細胞癌の対処方法

メルケル細胞癌は皮膚がんなので、疑わしい症状がある場合は放っておくことはおすすめできません。繰り返しになりますが、悪性度が高いがんなので進行していってしまいます。

メルケル細胞癌は、紫外線が関与していることが多いです。予防としては常日頃より、遮光が大事になってきます。具体的には日光を避ける、長袖やUVカットなどの日光保護効果の高い服を着る、日焼け止めを使うなどです。

なお、日焼け止めはSPF30程度のものをこまめに(可能ならば二時間毎)使用するのが良いでしょう。

メルケル細胞がん予防
引用元:very well health

ニキビなどと勘違いしてしまい、市販薬を使っていても効果は無いと思いますので、なかなか治らない大きめの紅いできものがある場合には、皮膚科受診をおすすめします。

メルケル細胞癌の生存率は再発してしまうと35%

メルケル細胞癌は悪性度が高いため、2年後の生存率が再発無しの場合は86%、局所再発ありでは35%です4)

ただ、免疫チェックポイント阻害薬や、医療技術の向上などで今後は予後が改善してくるのではと期待されています。また、まれにですが、自然治癒することも。

まとめ

メルケル細胞癌についてご説明させていただきました。

メルケル細胞癌は悪性度の高いがんだ、ということがおわかりいただけたと思います。

頭や首に治らないデキモノや、大きくなっていくデキモノを見つけた際には、皮膚科を受診してください。怖い話になってしまいますが、いつか治るだろうと様子をみていて病期が進行してしまうケースもあります。

自己判断するのではなく、早めに専門家の診察を受け精密検査が必要かなどの判断が必要です。

参考文献

1. あたらしい皮膚科学. 第3版. 清水宏. 中山書店. 2018年.

2. Katano H, et al. Detection of Merkel cell polyomavirus in Merkel cell carcinoma and Kaposi’s sarcoma. J Med Virol 81(11):1951-1958, 2009. doi: 10.1002/jmv.21608.

3. Kaufman H, et al. Avelumab in patients with chemotherapy-refractory metastatic Merkel cell carcinoma: a multicentre, single-group, open-label, phase 2 trial. The LANCET Oncology 17(10):1374-1385, 2016. doi: 10.1016/S1470-2045(16)30364-3. Epub 2016 Sep 1.

4. Akhtar S, et al. Merkel cell carcinoma:Report of 10 cases and review of the literature. J Am Acad Dermatol 43(5 Pt 1):755-767, 2000. doi: 10.1067/mjd.2000.106505.

コメント

この記事へのコメントはありません。

コメントする

CAPTCHA