手湿疹とは?原因や病院での治療、紛らわしい病気について

藤井あさ美

こんにちは。皮膚科専門医の藤井あさ美(医学博士)です。

手湿疹とは

手湿疹とは、名前のとおり手にできる湿疹のことです。

湿疹のタイプはさまざまあり、てのひらや手の甲、指に紅斑(こうはん:赤み)や丘疹(ぶつぶつ)、水疱(すいほう:水ぶくれ)、鱗屑(りんせつ:皮むけ)が起こり、ひどくなると亀裂(きれつ:ひび割れ)ができ、多くの場合はかゆみを伴います。

『手荒れ』が進行した状態と考えられており、手に触れる物質の刺激やアレルギーによって生じる、接触皮膚炎の一種

接触皮膚炎の中で、もっとも頻度が高く、刺激性皮接触膚炎がアレルギー性接触皮膚炎より多いです。

また、手湿疹は男性より女性に多く、炊事や洗濯など水仕事の多い主婦によくみられるため『主婦湿疹』とも呼ばれます。職業柄、化学物質を含む洗剤や水を多く使用する美容師や調理師さんにも多いです。

もともと皮膚が乾燥しやすい、アレルギーを起こしやすいなどの体質を持つ人や、アトピー性皮膚炎の人は、皮膚のバリア機能が低下しやすく、手湿疹を起こしやすいとされています。

手湿疹の症状(さまざまなタイプ)

手湿疹の症状は、手に繰り返す湿疹病変です。湿疹病変と言っても、カサカサして乾燥するタイプから、水疱ができるなどしてジュクジュクするタイプなどいろいろあります。そのため、手湿疹はそれぞれ症状の特徴ごとに分類され、病名が。

進行性指掌角皮症

進行性指掌角皮症皮は、指の腹が乾燥して粗造(そぞう:きめが粗なること)、指紋がみられなくなって、ときには指先に亀裂ができます。利き手の、親指、人差し指、中指の指先に症状が。

皮膚バリア機能の低下に加えて、物理的あるいは化学的な刺激が誘因と考えられています。物理的刺激の例はキーボードを頻繁に扱う(指先を酷使する)、化学的な刺激の例は洗剤やパーマ液(美容師さん)、アクリル(歯科医や歯科技工士さん)など。 

従来から、水仕事の多い主婦や美容師、調理師、歯科医、歯科技工士に多くみられましたが、感染予防のための頻回の手洗いが一般的になってきており、パソコンを長時間使用する人も増えてきたため、一般のサラリーマンの男性の患者さんも増えています。

私も主婦で、パソコンも長期間使用するため、進行性指掌角皮症皮をもっていますが、皮膚科医なので、ケアはしており皮膚炎はほとんどありません。ただし、指紋はかなり薄くなってきており、指紋認証にいつも苦労しています。

角化型手湿疹

角化型手湿疹では、てのひらに分厚いカサカサがみられます。カサカサの範囲は、てのひらの一部のみにみられ、正常な部分との境目がはっきりしています。進行すると乾燥の程度が強くなり、ひび割れたりも。

一度ひび割れるとなかなか治りにくいです。同じような症状が足の裏にもみられることが。中年以降の男性に好発し、原因はよくわかっていませんが、『異汗性湿疹』がベースにあり、それを掻破(そうは:掻き壊すこと)して起こるとも言われています。

貨幣型手湿疹

貨幣状型手湿疹では、主に手背(手の甲)に皮膚炎がみられ、直径1~数cm程度の境界のはっきりした円形の湿疹ができます。

湿疹は赤~赤褐色で、周辺部に小さな水疱(水ぶくれ)を伴う丘疹(ぶつぶつ)があり、中心部は赤みが強くじゅくじゅくして、痂皮(かさぶた)や鱗屑(かさかさ)が。かゆみが強いのも特徴です。かゆみのため掻いてしまい湿疹が広がっていきます。

刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎のいずれでも起こるとされ、またアトピー性皮膚炎の方にも多くみられるようです。

汗疱性手湿疹

汗疱(かんぽう)、汗疱性湿疹、異汗性湿疹とも呼ばれます。汗を多量にかいた時に、汗腺が詰まり、出口をふさがれて皮膚内に溜まった汗によって皮膚炎が発生。手指側縁やてのひらに小さな水疱(水ぶくれ)が出現し、かゆみを伴います。

でき始めのときは、透明な小さな水疱のみで、紅斑(赤み)はみられませんが、次第に水疱が乾燥してカサカサしてきて、まわりに紅斑がみられるように。同じような症状が足の裏にも見られます。多汗症や金属アレルギーの人によくみられる症状です。

乾燥・亀裂型手湿疹

乾燥・亀裂型手湿疹では、手掌、手指全体の強い乾燥と亀裂がみられ、慢性に経過し、冬になると悪くなることが多く、小水疱はみられません。皮膚バリア機能の低下が誘因とされ、昨今では頻回の手洗いとアルコール消毒の使用により患者さんが増加。

手湿疹の原因

皮膚は表皮、真皮、皮下組織から成り立っており、一番外側から順に『表皮』『真皮』『皮下組織』。

皮膚の構造
引用元:maruho

表皮は角層→顆粒層→有棘層→基底層からなっていますが、てのひらと足の裏には角層と顆粒層の間に透明層という層を含み、角層自体が特別に分厚く丈夫にできています。これは、物をつかんだり、体重を支えたりするためです。

しかし、度重なる水仕事やさまざまな摩擦や刺激にさらされ続けると、厚い角質層もバリア機能が低下し、皮膚炎を起こしてしまいます。

さらに、てのひらと足の裏には毛が生えておらず、皮脂腺が存在しないため、皮脂が分泌されず、乾燥しやすく、一旦皮膚炎を起こしてしまうと、常に刺激にさらされる部位であるので、治りにくいという特徴が。

皮膚構造
引用元:maruho

手湿疹の原因は主に4つにわけられますが、複数の要因がかさなって起こることもあります。

①刺激性接触皮膚炎

手湿疹の半数以上がこの刺激性接触皮膚炎です。アレルギーのあるなしに関わらず、誰にでも起こりえます。洗剤などにより皮膚の脂分が抜けてしまうなどの理由で皮膚のバリア機能が低下して、外からの刺激に対して接触皮膚炎を起こします。

②アレルギー性接触皮膚炎

アレルギー性接触皮膚炎は、皮膚に化学物質が触れることによってアレルギー反応(免疫反応ともいいます)が起こることで発症します。一旦アレルギーが成立すると、その原因物質に触れる度に繰り返し皮膚炎が起こります。人によって、アレルギーを起こす物質は異なりますが、主なものを紹介します。

原因物質 症状・概説
金属(ニッケル、コバルト、クロム) 接触部位を越えて接触皮膚炎症候群や全身型金属アレルギーを生じることがある。金属を含むもの(皮革・塗料など)に触れて生じることが多い。
樹脂(レジン)、エポキシ樹脂、アクリル樹脂 手だけでなく顔面にも生じる。微細な粉として空気中に浮遊して症状を起こす。工場現場以外に歯科衛生士に発症。
ゴム(MBT、TMTD*) 職場では手袋や長靴のゴムが問題となることが多い。
農薬(除草剤・抗生剤) 手や露出している顔面・頸部などに紅斑や苔癬化、亀裂を生じる。原因が反復して接触し慢性化することが多い。光接触皮膚炎を起こすことも。
切削油、機械油 ざ瘡(にきび)を生じることもある。切削油のなかには種々の物質が含まれていて、原因の特定は困難。
植物 ウルシやギンナン、キク科、ウコギ科、ユリ科、シソ科など多岐。

<日本職業・環境アレルギー学会監修 職業性アレルギー疾患ガイドライン2013を改編*MBT;2-メルカプトベンゾチアゾール、TMTD;テトラメチルチウラムジスルフィド どちらも加硫促進剤>

植物のウルシでかぶれることはよく知られていますが、サクラソウなど園芸で扱う植物でもかぶれを起こす場合が。

ゴム製品やゴム手袋でかぶれるときは、ゴムに含まれるラテックスでアレルギーを起こす場合とゴム製品に含まれる加硫促進剤(ゴムを伸び縮みしやすいように硫黄を加える際に使われます)にかぶれる場合があります。

現在はラテックスが使用されていない製品も市販されているので、ゴムにかぶれる人はテックスフリーの製品を買うようにしましょう。

また、樹脂を扱う歯科衛生士さんは、レジンなどの樹脂でかぶれることがありますが、その場合は手袋などで手を保護していても、空気中に樹脂の成分は浮遊しているため症状が出ることも。

これらのアレルギー性接触皮膚炎は原因物質に触れてから24~48時間で強いかゆみと皮膚炎を発症しますが、金属のアレルギー性接触皮膚炎ではかゆみなどの症状が出てくるのに数日~1週間くらいかかることもあります。

③たんぱく質接触皮膚炎

たんぱく質接触皮膚炎では、魚アレルギーや甲殻類(エビやカニなど)のアレルギーがある場合に、生魚やエビやカニに触れるとすぐにじんましんがあらわれ、その後水疱(水ぶくれ)になり、手湿疹となります。

④アトピー型手湿疹

もともとアトピー性皮膚炎がある人の、症状として手湿疹がみられることがあり、これをアトピー型手湿疹といいます。

手湿疹と間違えやすい病気

手湿疹にも原因別、症状別にさまざまな種類がありますが、手湿疹と間違えやすい他の病気もあります。治療法が変わる場合もあるため、注意しましょう。

手白癬

手白癬は、白癬菌という真菌(カビの一種)が皮膚に感染して起こる病気です。白癬菌による皮膚病は『水虫』と言われますが、水虫は足や爪だけえなく、手にも起こります。

手白癬のほとんどは、もともと足白癬を持っていた人が、手にも感染を起こして発症。その場合は手の白癬だけでなく足の白癬の治療を同時に行うことが大切です。

ときどき足白癬がなく、手白癬が初発となる人がいますが、そのほとんどは、ステロイド外用剤の長期誤用によるもの。ステロイド外用剤を長期(目安は4週間以上)連続して使用する場合は、必ず医師の診察を受けるようにしてください。

手白癬では、かゆみはあまり強くなく、皮膚が全体にカサカサして分厚く硬くなることが多いです。足白癬は通常、抗真菌薬の外用剤で治療します。

手の白癬でも範囲が小さい場合は外用剤のみで治療できることもありますが、多くの場合は足白癬よりも難治であり、抗真菌薬の内服治療を行うことが多いです。

カンジダ症(カンジダ性指間びらん症、カンジダ性爪囲炎 )

カンジダ菌は皮膚の常在菌のひとつで、そのカンジダ菌が異常に増殖して発症します。水仕事をする人に多くみられ、カンジダ性指間びらん症では指と指の間がふやけてびらん(皮がむける)に。かゆみや少し痛みを伴うことがあります。

カンジダ性爪囲炎では、爪の周囲が赤くなってふやけて腫れて、膿が出ることも。どちらも治りにくく、再発しやすいです。

カンジダ性指間びらん症
引用元:dermnetnz

掌蹠膿疱症 (しょうせきのうほうしょう)

てのひらや足の裏に小さな水疱(すいほう)や膿疱(のうほう:膿のかたまり)が繰り返しできる病気です。かゆみはある人もない人も。詳しい原因はまだ解明されていませんが、喫煙、銀歯による金属アレルギー、ストレス、扁桃炎などが関与しているといわれています。

膿をもつ水疱ができるため感染症と間違えられることもありますが、細菌やウイルスが原因ではなく、感染することはありません。

治療法としては、まず病気を悪化させる要因があれば除去、そういった増悪因子が見つからない場合は、炎症を抑えるための対症療法が主になります。

皮膚筋炎

皮膚筋炎は、膠原病の一種で主に皮膚と筋肉に炎症が起きる病気です。筋炎がある場合は大きな筋肉が障害されやすく、しゃがんでから立つのが大変になった、階段が上りにくい、洗濯物が干しにくいといった日常の動作に支障が出ることが。

皮膚症状は顔や手の皮膚炎で気づかれることも多く、中でも手の皮膚炎は皮膚筋炎の早期発見にとても重要です。

機械工の手(メカニクスハンド)
引用元:日本皮膚科学会

また、この病気では『筋症状のない皮膚筋炎(amyopathic dermatomyositis)』という筋症状のない病型があり、その場合は急激に進行する急速進行性間質性肺炎という命に関わる重症の肺炎を合併することが知られています。

その場合は皮膚病変から早期にこの病気を発見して、治療につなげることが非常に重要です。

皮膚筋炎では機械工の手指にできる職業性変化に似た、手指の側面にカサカサした赤い皮膚炎やゴットロン徴候と言われる手指の関節背面のカサカサした皮膚炎が特徴。

訓練を受けた皮膚科医であれば、手湿疹の診察をする際はこの皮膚筋炎の可能性を頭の片隅においています。

ゴットロン徴候
引用元:日本皮膚科学会

手湿疹の治療

手湿疹は、手に起きる接触皮膚炎であるため接触皮膚炎の治療と基本的には同じになります。具体的には、原因と考えられる刺激物質があれば、できるだけ触れないようにすることが一番の治療です。

原因をはっきりさせるため、接触皮膚炎の場合と同様にパッチテストなどを受けることも有用。 

外からの刺激を除去し、保湿剤によるケアやステロイド外用剤による皮膚炎の治療を行います。かゆみを抑えるために抗ヒスタミン薬の内服を併用することも。

手白癬の項でも触れましたが、手湿疹に対するステロイド外用剤の使用は症状にあわせて断続的(症状がひどい時にのみ使用する)にするべきとされており、4週間でその効果を判定するように教科書には記載。

しかし主婦湿疹や職業性の手湿疹では、なかなか炊事や洗濯など避けて通れないことや、職業上完全に接触を断つのが難しい場合も多いと思います。せめて、なるべく手の負担を減らし改善するために日頃のケアが大切です。

家庭でできる対策 

治療のところでも触れましたが、手湿疹は手の接触皮膚炎であり、原因物質があれば、それを避けるようにすることが重要です。

皮膚がカサカサして乾燥している場合は、保湿剤によるケアをこまめに行ってください。手湿疹の人は皮膚のバリア機能低下がみられる人が多いです。言い換えると、刺激を避け、乾燥を防ぐように心がける、ということになります。

ベビーワセリン
引用元:健栄製薬



手の洗いすぎは手湿疹を悪化させますが、感染症の予防においては手洗いは非常に大切なので、『手はしっかり洗う。その後も保湿クリームを塗ってケアをしっかりやる。』を合言葉に保湿ケアをきちんと行いましょう。

チューブタイプのものを常に携帯し、手洗いの度に使用するのが理想的です。

ザーネクリーム
引用元:エーザイ

食器洗いやパーマ液を触る際はゴム手袋を着用しましょう。ゴム手袋でかゆくなる場合は、ラテックスフリーの手袋を使用するか、薄い綿の手袋を着用してからゴム手袋を履くようにするとよいでしょう。

手湿疹がひどいときは、水仕事以外でも刺激の少ない綿の手袋を着用することで刺激を減らすことができます。手を洗ったり、炊事などをしたあとは水分をしっかりふき取ることも大切です。手に水分が残っていると、蒸発するときに皮膚も乾燥してしまいます。

赤いぶつぶつが出たり、かゆみがひどい場合はステロイド外用剤を使用し、できるだけ触らないようにしましょう。掻いてしまうと、さらに皮膚炎が悪化し治りが悪くなります。ステロイド外用剤のお勧めは、接触皮膚炎の時と同様、成分がシンプルなものがよいでしょう。

症状が回復するまでは、朝・晩などなるべくこまめにお薬を塗るように。

リンデロンVs
引用元:塩野義製薬
フルコートf
引用元:田辺三菱製薬

手湿疹は重症化、難治化する場合もあるため、症状が長引く場合や、何度も繰り返す時は早めに皮膚科専門医の診察を受けるようにしてください。

まとめ

手は多くの役割を担っており、日常生活上のさまざまなことは手を使わずにはできません。その分、多くの刺激を受ける部位であり、一旦手湿疹を発症するとなかなか治りにくいことが多いです。

また、職業性の接触皮膚炎による手湿疹の場合は、悪化すると離職を余儀無くされる可能性もあり、原因の特定と除去が非常に大切になります。

たかが手湿疹、と放置せずにしっかりケアを行い、それでもよくならないときは早めに皮膚科専門医の診察を受けることをお勧めします。

参考文献:

接触皮膚炎診療ガイドライン2020 日本皮膚科学会

皮膚病診療パワーアップ 秀 道広他 中山書店 2018年

皮膚科Q and A 日本皮膚科学会HP