基底細胞癌が手遅れにならないために 顔にできる光沢や潰瘍のあるホクロは、早めに皮膚科へ相談

藤井あさ美

こんにちは。皮膚科専門医の藤井あさ美(医学博士)です。

鏡で自分の顔を見る機会は毎日あると思いますが、新しいデキモノなどが顔にあったら不安になるでしょう。そして、それが治らずに長い間消えないとなると、皮膚癌を心配される方も多いのではないでしょうか。

日本では、タレントのキャシー中島さん、海外ではヒュージャックマンさんが皮膚癌で手術を受けたことを公表されています。

彼らがかかった皮膚癌は、基底細胞癌という癌なのですが、基底細胞癌をご存知でしょうか?基底細胞癌は、皮膚悪性腫瘍の中では最も頻度が高い腫瘍です1)

治らないデキモノなどの症状があれば、一度は皮膚科を受診した方が良いかもしれません。

今回は、皮膚癌の一つである基底細胞癌という病気について紹介していきたいと思います。

基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)とは

基底細胞癌は皮膚癌の一つです。皮膚癌は、皮膚悪性腫瘍と呼ばれることもあります。

基底細胞癌(多くの別名があり、基底細胞上皮腫 basal cell epithelioma、基底細胞腫 basalioma、悪性毛芽腫 malignant trichoblastomaとも)は、基底細胞に似た細胞が真皮内で巣状に増殖する皮膚悪性腫瘍です。

人間の皮膚は外側から、表皮・真皮・皮下組織という三層構造になっていて、一番外側の層である表皮の最下層部に、基底細胞という細胞があります。基底細胞は皮膚の元となるような細胞です。

基底細胞がん

基底細胞は正常な細胞ですが、これに似た悪性の細胞が真皮という外から二番目の層で増えてしまい、悪性腫瘍を形成してしまうのが基底細胞癌。

悪性細胞は多様な分化傾向を示す胎生期上皮細胞由来です。つまり、元々の皮膚の細胞が癌化し、いろいろな形になる可能性があります。

基底細胞癌は、皮膚悪性腫瘍の中では最も頻度が高い皮膚悪性腫瘍です1)

基底細胞癌の原因

基底細胞癌の原因は、PTCH・SMO遺伝子など細胞の分化にかかわるヘッジホッグシグナル伝達経路の異常が発症に関与し、紫外線や外傷、放射線、瘢痕などと関連性があると言われています。

また、色素性乾皮症、母斑性基底細胞癌症候群、慢性放射線皮膚炎、慢性砒素中毒、脂腺母斑などの基礎疾患から発症することも。元々の病気から発症する場合には、若年者にも生じて、多発します。

色素性乾皮症

生まれつきDNA修復過程に障害があり光線過敏症などを引き起こし、悪性腫瘍を合併しやすい病気です。

母斑性基底細胞癌症候群

伝疾患であり、手足の小陥凹と基底細胞癌が多発します。

慢性放射線皮膚炎

癌などの治療で放射線を長期にあてた際に起こる皮膚炎です。数年後に基底細胞癌などの皮膚癌を発症することもあります。

慢性砒素中毒

長期間に砒素を摂取し発症する病気です。地下水に溶け出した砒素を摂取することなどが原因となっています。皮膚に色がついてしまったり、皮膚癌を引き起こしたりします。

脂腺母斑

頭部や顔面によくできる良性の皮膚腫瘍です。生まれつき持っている人が多く見られます。母斑(ホクロ)と名前がついていますが、多くの場合には淡い紅色です。脂腺母斑は良性疾患ですが、何十年後に基底細胞癌などに悪性化することもあります。

顔にできる光沢や潰瘍のあるホクロは、基底細胞癌を疑え

基底細胞癌は40歳以上に好発し、男女での発症率に差はありません。ただし、紫外線が原因となるためか、高齢者の顔面(特に正中、鼻中心)に好発するといわれています。2)

基底細胞がん
引用元:My Skin Center

硬い黒褐色蝋様の光沢性小結節が生じ、病巣辺縁部をふちどるように配列するのが特徴です。病変内や周囲に毛細血管拡張を伴うことが多いです。中央部が特に誘引無く潰瘍、キズになっていることもあります。

一見するとホクロのように見えることもありますが、ホクロは外から刺激を加えない限りキズになることは多くありません。

さきほど、基底細胞癌がいろいろな形になることがあると書きましたが、臨床症状から結節型・表在型・斑状強皮症型・ピンカス型の4つの病型に分けることができます。

  • 結節(潰瘍)型(nodular BCC)

    基底細胞癌の80%以上を占める一番多い病型です。硬い黒色小結節が融合した外観で、表皮に毛細血管拡張を伴っています。しばしば中央が潰瘍化します。潰瘍が進行したものを破壊型といいます。
  • 表在型(superficial BCC)

    体に好発する紅色~黒褐色の扁平隆起性浸潤局面を形成し、徐々に外方に拡大します。
  • 斑状強皮症型(モルフェア型:morpheaform BCC)

    楕円形の浸潤局面で中央がやや萎縮する、モルフェアに類似する病型。モルフェアとは、中央部は光沢があり象牙色になり、類円形に皮膚が硬化する病気です。
  • ピンカス型(fibroepithelioma of Pinkus)

    有茎性の小腫瘍が腰部や仙骨部によくみられます。非常に珍しい病型です。

基底細胞癌では、ホクロのように黒い色がつくことが多いのですが、無色素性基底細胞癌と呼ばれる、色の薄い基底細胞癌も存在します。繰り返しになりますが、このように基底細胞癌は多彩な臨床像を呈します。そのため、自己判断はせずに、治らないデキモノが顔などにできた時には皮膚科を受診するのが良いでしょう。

基底細胞癌の検査・診断方法

多くの場合は、皮膚科の医師の視診や触診による診察で基底細胞癌の疑いがつきます。その上で更にダーモスコピーという検査を行います。

ダーモスコピー検査は、ダーモスコープという医療器具を用いて行う検査です。ダーモスコープによって皮膚腫瘍などを明るく、拡大し皮疹の詳細まで見ることが。これにより、良性・悪性を見分けていきます。

ダーモスコピー検査は基底細胞癌においては有力な補助診断法です。ダーモスコープにて、基底細胞癌は樹枝状血管・葉状領域・多発性青灰色小球・類円形大型胞巣などの特徴的な所見が得られます。

ダーモスコピー

その後に、確定診断・組織分類の為には皮膚生検という皮膚の一部を取り精密検査をすることも。

皮膚生検を行う際には局所麻酔を使用し、皮膚の一部をメスや丸型などの特殊なメスでとります。とった皮膚は病理検査といって、特殊染色し顕微鏡を用いた検査を。

WHO・NCCNガイドライン・AJCC(American Joint Committee on Cancer)いずれにおいても病期分類(TNM 分類)は提示されておらず3)、AJCC において、有棘細胞癌に準じるとされているのみです4)

基底細胞癌と似たような症状をとる、母斑細胞性母斑、尋常性疣贅、脂漏性角化症、悪性黒色腫といった病気もありますので、鑑別には注意が必要。

母斑細胞性母斑とは、俗に言うホクロです。良性の疾患であり、ダーモスコピー検査が有用になります。

尋常性疣贅とは、俗に言うイボです。ヒト乳頭腫ウイルスによる感染が原因の良性の疾患で、ダーモスコピー検査が有用になります。

脂漏性角化症とは、盛り上がってくるシミのような症状が。以前は老人性疣贅と言われており、老化によるものです。ダーモスコピー検査が有用になります。

悪性黒色腫とは、悪性度の高い皮膚癌です。さまざまな形を取ることが多いので、基底細胞癌と似たような形態になることがあり、ダーモスコピー検査と皮膚生検術を行います。

基底細胞癌の治療は、手術が基本

基本的には、第一選択は外科的に切除する手術療法になります5)

がんの状況によって変わりますが、約3-10mm前後の幅をもたせて皮膚癌を切除。取り残しを防ぐ為に、腫瘍部を大きく深く取ります。手術後には取ったものの病理検査を行い、取り残しが無いか確認。

手術療法は、全身麻酔や局所麻酔を用いますので大掛かりな設備が必要になることが多く、できる施設が限られている点や、どうしても手術部の創部感染や麻酔の合併症などを起こす可能性があります。

場合によっては放射線療法や、Mohs手術、抗がん剤による化学療法、凍結療法などが行われることも。

放射線治療は、リニアックという機械を用いて、体の外から病巣部に放射線をあてて治療を行います。病巣部以外の正常な部分にもどうしても放射線があたってしまうため、副作用が起こることが。

主な副作用は、貧血、倦怠感、疲労感、出血しやすくなることなどがあります。少ない頻度ですが、二次性にがんを作ってしまうことも。

Mohs手術は皮膚癌が取り切れるまで、小さく細かく切除を行っていく手法です。ただし、日本では保険適応ではなく、あまり普及していません。

化学療法は、点滴や注射や内服の抗がん剤などを用いて、がん細胞の増殖を抑えたりがん細胞を破壊したりします。化学療法は投与されると全身に作用しますので、体中のがん細胞に効果が。

ただし、全身に作用しますので副作用は避けて通れません。全身に作用するということはメリット・デメリットがあります。

主な副作用は、投与当日は蕁麻疹や発熱などで、数日後に吐き気や食欲不振、数週間後に白血球減少や脱毛や口内炎、数カ月後に爪や皮膚の変化が起こることも。

凍結療法は、液体窒素にて癌細胞を冷凍させ壊死させる治療法です。比較的簡単にでき、副作用も少ないのですが、効果がみられないこともあります。主な副作用は、痛み、創部感染などです。

基底細胞癌は悪性度が高くない皮膚癌ですので、再発や転移などを起こす可能性は高くありません。いずれにしても、まずは手術療法を検討することになるでしょう。

基底細胞癌の予防は、日焼け対策などが重要

基底細胞癌は、皮膚癌です。そのため、放置しておけば進行してしまいます。疑わしい症状がある場合は放っておかず、皮膚科の診察を受けてください。

紫外線が原因となりますので、日焼け止めや日光を避けることが重要です。

市販薬での改善や、自然寛解はほぼありませんので専門の医師の診察を受けることをお勧めいたします。

まとめ

基底細胞癌は、皮膚悪性腫瘍の中で最も頻度が高い皮膚悪性腫瘍です。誰にでもできる可能性があります。

悪性度は高くない皮膚癌ですが、放置しておけば進行してしまいますので放っておかずに専門の医師の診察を受ける必要が。

顔にできる光沢のあるホクロが気になる場合は、ぜひこの記事を思い出していただければ幸いです。

参考文献

1. Maryam M Asgari, et al. Trends in Basal Cell Carcinoma Incidence and Identification of High-Risk Subgroups, 1998-2012. JAMA Dermatol 151(9): 976-981, 2015. doi: 10.1001/jamadermatol.2015.1188.

2. あたらしい皮膚科学.第3版.清水宏.中山書店.2018

3. WHO Classification of Skin Tumours. 4th Ed. Elder DE, et al. IARC Press. Lyon. 2018.

4. AJCC Cancer Staging Manual. 8th. Amin MB, et al. American College of Surgeons.NY. 2017.

5. 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第 3版 基底細胞癌診療ガイドライン. 2021年

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